2019年5月30日木曜日

文化の森へ行って勉強したこと その1

20180301

 昨日、文化の森の展示物でいくつか見たいものがあったので自転車で少し遠いが出かけて行った。私が見た展示物は三つ(それぞれ別の会場、ブースでやっている)

〇鳥居龍造の探検調査研究の軌跡とその発掘物

〇日本人のルーツを探る(出土品、遺骨、それと最新のDNAの研究も援用して解説していた)

〇阿波三大絵巻もの一般展示

 自分の興味、趣味に属する分野でもあるので面白かったし、大変勉強になった。また、普通、このような展示物は写真・動画撮影などが禁止されているのだが「日本人のルーツ・・・」以外は、フラッシュを使わなければ撮影可なので、撮影した資料を後から再び見て勉強に役立てることができる。そんなわけで昨日のこの文化の森で展示を見たことで少なくともブログのネタが5つくらいはできそうである。

 その中からまず最初は鳥居龍造博士を取り上げる

その1 鳥居はんはインディ・ジョーンズ?

 みなさん「インディ・ジョーンズ」という映画はご存じでしょう。続編もいくつか作られていますがこういうものは第一作目が一番面白いのが普通ですね。一作目は「レイダース 失われたアーク《聖櫃》」でした。インディは考古学者ですが世界各地に出向き、発掘を通した冒険が大好き。当然、当地で遺物を発掘するのだけれど、それが超一級の発掘物どころかそれをはるかに凌ぐものなのです。なんとその発掘物は実に不思議な超自然パワーをもっているというのがいつものお約束、そしてそれを手に入れ世の中をわがものにしようとする悪党がそれを奪おうとするのも定番です。そしてインディと悪人とのドキドキハラハラの冒険活劇が展開されます。これは映画館で見たからだいぶ昔だろうと思っていましたが、作成されたのは1981年、なんともう37年も昔なんですね。私も歳がいくはずですわ。

 インディはカッコよく、瞬時に状況判断して危機から逃れる瞬発力抜群、運動神経抜群のマッチョな男ですが(なんかありそうもない偶然の幸運も味方をします、こういうところが娯楽映画ですね)、映画ではそちらに焦点が当たりすぎるきらいがあります。しかし彼の本職はあくまで大学に籍をおく考古学者です。考古学的な調査研究があるからこそ、世にも稀で貴重な発掘物を手にできるのです。学術的な分厚い蓄積があればこその活躍なのです。(映画でははっきりしませんがオックスフォード、ケンブリッジ大学の博士級の学者です)

 もちろんインディ・ジョーンズは実在の人物ではありません。学者に冒険活劇のような能力を要求するのはちょっと無理ですよね。しかし学者の中にあっても考古学者は、世界各地の遺跡(それも環境の極めて厳しい砂漠、熱帯雨林、あるいは埋没したり、厚い土に覆われているため大規模な発掘がをしなければならないような危険な場所)へ出向いて行って、たいてい自ら(指揮)作業に加わったりしますから、軟弱な学者タイプとは違った人も多いのも事実ですが。映画のようなスーパーマンに近いような考古学者はまずいないんじゃないでしょうか。このようにインディはすぐれた頭と機敏で強健な肉体をもった想像上の人物ですがモデルはいます。それはいついかなる時代のどんな国の考古学者でしょうか?

 皆さん、インディ・ジョーンズの映画の背景に注意を払われたことはあるでしょうか。時代はいつでしょう?『失われたアーク(聖櫃)』を見ればわかると思いますが、インディに対する悪モンとして出てくる悪の巨魁が「ナチスドイツ」でしたね。それで時代のおおよそはわかりますね、正確には1936年(昭和11年)です。そしてナチスに対する活躍やからまあアングロサクソンがエエモン(善)のなるのは妥当です。だからアングロサクソンの国、イギリスでも、アメリカでもいいんだけど(実際はプリンストン大学の博士です)なぜ、この時代のこのような国の中からインディが生まれる素地があるのか?

 映画の中で、エジプトや中東の砂漠、あるいはパレスチナの荒野などでアングロサクソンの考古学者が発掘している場面が頻繁に出てくるでしょう。土を掘り返したり、運んだりするのは現地人がたくさん従事しています。あれ、ちょっと考えたらおかしいことおまへんか?

 「なんで手んごろ易~ぅに、現地での発掘ができ、現地人を自由自在に使い、あないに大々的に発掘作業ができるのか?」

 発掘される現地の国の主権を無視していないのか?正式に許可を受けてあんなに重要な遺跡が発掘されたのか?まして発掘品がなしてイギリスやアメリカの博物館、大学の研究室にあるのか?その国の主権侵害以上に、その国の数千年来の文化的遺物でっせ、発掘品をアングロサクソンの大学に持って行くのはおかしいやろ。

 とは現在の200数十も独立した主権国家がある現代だから言えること。当時、昭和11年頃は地球の多くの部分は植民地に覆われていて、一人前の主権国家は欧米とアジアでは日本くらいのもの。インディの活躍するエジプト、中東地域(パレスチナも含め)は全部、欧米の植民地だった。だからそんなところで宗主国が発掘しようが現地人をこき使おうが自由自在だったのである。もちろん発掘品は宗主国の大学に所蔵され思う存分研究が出来たのである。

 インディが自由に発掘でき、中東諸国で自由自在のヤンチャを繰り返し(悪人との追跡劇でバザールに逃げ込み現地人の露天をひっくり返しながら逃げるのなんかひどい!あとであれ、補償しているのかしらんと思う)、暴れまくるのは、そこらはみんな植民地であり、インディがその宗主国(アングロサクソン)のエリートだからである。現地人で追跡劇で被害をこうむる人なんかからいわしたら、ナチスもインディもワイらには迷惑、どっちもおんなじことでっせ。と言いたくなる。

 しかし、悪いことばかりではない、この時代の大英帝国の版図をご存知だろうか。もうおぶけかえるくらい広く地球の表面を覆っている。中近東だけに限ると、エジプトからシリア、イラク、ペルシャ湾岸を通ってインド全域・・・ってこれ、なんと古代4大文明のうちの3つも入ってまっせ(エジプト、メソポタミア、インダス文明)これを支配するのが大英帝国です。宗主国は主権だの地権だの人力だの気にせずにこれらの地域をどこでもかなり自由に発掘できます。これは学術的な実践研究の上では制約されないことで大変良いことである。この時代、文化人類学や古代遺跡の発掘が進み、これらの学問が大いに発展したのである。

 広い版図を支配した大英帝国の古き良き時代だからインディはあんだけ活躍したのだということができる。もちろんインディは架空の人物だが、モデルとなりそうなエジプト、メソポタミアの考古学者はアングロサクソン系学者で10人は下るまい。これらの人々はインディのような現地での大活劇はともかくとして、この時代宗主国の学者様としてかなり自由にあっちこっちを現地人を使い掘り返し、発掘品を本国に送り、好き勝手な研究ができたのである。

 世界4大文明のうち3大文明までは大英帝国の版図であって欧米の学者が自由自在にふるまえたが、残る東アジアではどうだろう?昭和11年ころの東アジア、今では恥ずかしがってそんなものがあったことも忘れ、消し去ろうとしているが(歴史にあんまし恥ずかしだの悪ぃことしただの、価値観を持ち込まん方がええと思うが・・・)かなり広い版図を持つ帝国が(大英帝国ほどではないにしても植民地や勢力圏を持ち多民族を支配した)あった。『大日本帝国』である。植民地も含めその版図勢力は、樺太、台湾、華南(福建省は日本の特殊権益が認められたところ)、朝鮮、そして満州帝国、内モンゴル、赤道までの南洋諸島、支配を及ぼした民族は恐らく(少数民族が多いが)100以上にのぼる。

 昨日、鳥居龍造記念館へ入ると広い展示コーナーの床一面にその版図が広がっていた。当然床を歩くため、私は大日本帝国の版図の床に立ち、大日本帝国があったころの発掘学術調査に思いをはせた。(こういう帝国の地図を描いた床の上にスックと立つのは気持ちがええもんや、自分が帝国の支配者になったような気がしないでもないわ)

 鳥居はんの文化人類学の調査、発掘、考古学研究の地理的範囲はまさに上記の大日本帝国の版図と見事にぴったり一致する。下はそれぞれの地域の展示ブースの説明です。

 インディのところでも言ったが、大英帝国の支配もいけないことはたくさんあったが、文化人類学や考古学の発掘調査は一元的に帝国支配が行われることでかなり便宜が図られ発展した面もあり、大英帝国の栄光は功罪とともに語られる。それにひきかえ大日本帝国は100%悪であるといわれる。この鳥居はんの展示も大日本帝国の版図と一致し、大英帝国のように文化人類学、考古学で大日本帝国も同じように便宜を図ったに違いないが、そんなことは一行も語られていない。帝国支配といってもこのように帝国政府による学術的な発掘調査研究にはそれが有利に働いたことも事実であろう。

 もし、日本のインディとして、モデルを推薦するなら私は鳥居はんを一番に推す。大学の研究室の博士であるが、自分の足で大日本帝国の版図にある各地の遺跡に出向き、調査発掘し、遺物を大学に持ち帰り研究したのである。その踏破したところは帝国の隅々にわたっている。

 インディは発掘現場で地中の中(地下宮殿や地下墓)に入って活躍するが、昨日見た記念館でも鳥居博士は地下の墳墓を発掘し研究している。そして展示はその実物立体模型があり、その中に入ると、自分がその地下墳墓の中に入ったような不思議な気がする。

 地下墳墓の地上入口の写真
 地下墳墓の実物立体模型動画



 インディはフィクションで、その発掘物が超自然的なパワーを持ちそれをめぐって物語が展開するのであるが、ここはどうだろう、私が推す日本のインディである鳥居はんを主人公にフィクションを創作しては。上記の『遼』の皇帝の地下の奥深い墓で何か禍々しい超自然の力を持つ遺物を鳥居はんが発見し、それをめぐって、インディのような活劇が展開するのである。誰か文才のある小説家が書いてくれへんかな。郷土の偉人ではあるが全国的には地味な昔の考古学者で知名度はほとんどない。しかし彼を日本のインディ・ジョーンズとして少しフィクションを加え、大冒険小説にすれば、この人の知名度も上がるし、この人の昔の功績ももっと評価されるだろうに。

 具体的な展示物はまた次回、別のブログにします。

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