2019年5月29日水曜日

今晩はモラエスさんの亡くなった夜

20170630


 モラエスさんの亡くなった日・モラエス忌は7月1日(明日だ!)とされているが、正確にいうと、発見されたのが7月1日である。前日の30日(つまり今日だわ)昼ごろ、隣人が玄関から中へはいらずに声をかけたら、モラエスさんの返事が聞こえたと証言しているのでこの日は生きていた。おそらく30日の夜に亡くなったのではないかと思われている。

 発見された時の状態から、警察や検死報告書は『変死』として扱われている。百年もたった今、モラエスさんの死について、おおっぴらに変死(つまり怪しいと疑問符が付く)とは述べていないが、当時の各新聞は、3つの憶測を書いている。一つは『墜落死』、二つ目は『自殺説』、そして三つ目として今のタブロイド紙やスポーツ紙のように『多額の遺産をめぐって他殺か?』と疑問符を呈しながら書いた新聞もあった。

 一世紀以上たった今では墜落死(せいぜい居間と土間の間の高さくらいだがこの高さでも高齢者が落ちれば死につながることもある)とされている。検死で彼の体からは強い蒸留酒の匂いがしたからキツイ酒をあおっていたようである。そのため、蒸し暑さもあって、渇きに苦しんで不自由な体ながら土間に水を飲みに降りようと思い、上がり框に足をかけたとき、眩暈か何かで体の平衡を失い、頭を柱のつけ根の石に打ちつけた。それは脳への大きな衝撃となり、脳出血をおこし、死へとつながった。というのが現代の公式見解じゃなかろうか。

 7月1日、起きてこないモラエスさんを不審に思った近所の人と家主は遺体や家の中の様子に仰天した。 土間にうつ伏せにのめった大男のモラエスさんの足がのびて斜めに空を切り足裏は天井を向いていた。居間のそこここは脱糞の跡と異臭で異様な雰囲気を醸していたそうである。その遺体の状態を聞くと、映画金田一耕輔シリーズ、犬神家の一族の殺人死体を思い出した。他殺説が出るのもわかる気がする。ちなみにモラエスさんは徳島の銀行に当時の2万円余(今の金に換算すると2000万円以上か)の預金があった。

 糞尿にまみれ、時節柄早くも腐臭を放ち始めた壮絶な遺体は巡礼遍路を雇って湯かんされたそうである(葬儀は仏式で荼毘にされた)、前々々回のブログで、モラエスさんが散策の途中、眉山の山頂から下を眺めた時、ある焼き場を見つけたと書いたが、その焼き場でモラエスさんは火葬にされた。

 モラエスさんは不自由な体の独り暮らしのお年寄りで水を飲もうと土間に落ちて亡くなった。百年たった現代でも一人暮らしのお年寄りが家で変死するのは跡を絶たない。そういうワイもその候補者じゃわ。

 なんまんだぶ

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