モラエス著『おヨネとコハル』の中の「ある散歩での回想から」
小春日和の気持ちの良い朝、というから10月下旬から11月初めの頃だろうか、ほとんど日課となっている潮音寺墓地のおヨネとコハルの墓参りの後、モラエスさんは潮音寺裏から眉山の遊歩道を少し時間をかけて散策する。
彼の歩いた山道には幾体もの石仏がそこここにあり、信心深い人々がその前に置いてある賽銭箱にコメを入れて参拝している。今でも八十八か所の各本尊に見立てた石仏が遊歩道沿いに並んでいる。古い石仏の中には100年前モラエスさんも見た石仏があるかもしれない。
モラエスさんの散策した当時の山道は今、どうなっているかわからない。彼の随想文だけからは辿りようがない。今、眉山山系の遊歩道はたくさんある。なんとか文に書いてあるようなよく似た道をさがして私も歩きたいと思っている。
まだその道はわかっていないが、それはともかく、その山道をたどり、モラエスさんは眉山の山頂か尾根まで登ったことが分かっている。その尾根付近で彼はある光景を目にする。
『それは目の前を曲がりくねって降りている渓谷、いや渓谷というよりもU字形の曲線が交互に重なって結びついて、いろいろな形の蛇状にのびた窪地である。その窪地は平坦になっていてそこは稲田に囲まれて幾群れかの家がかたまっている。しかしよく見るとそれらの家の真ん中に赤レンガの煙突がぬっと立っている。あれは・・・・・』
私もモラエスさんの跡をたどり眉山の山道を登り、同じ尾根に立ち、同じ光景を追体験できないかしらん、と思っていた。しかし、最近、体力も落ち、体調も良くないので、なかなかその機会を見いだせないでいた。
昨日、偶然にもそのあたりへ用事で行く知り合いの車に乗せてもらったついでに、お願いして、眉山パークウェイを走り、その窪地らしきあとやモラエスさんが見下ろした尾根までいって、今はどうなっているか見てきた。
0 件のコメント:
コメントを投稿