2019年5月18日土曜日

ベロ青のはなし その2 赤血塩はどうなった

20140616

 さて前回のお話の続きですが、予想通り私の創作が入っています。しかしまるっきり嘘と言うわけでなく血液を原料の一つにしたというのはあっています。これをはじめて作り出た状況に関しては実は調べてもあまり出てきません。だから私の創作が入る余地があったのですが・・・ わかったのは
 
 『1726年にイギリスのジョン・ウッドワードがこの顔料が草木の灰とウシの血液から製造できることを発表し、製造方法が広く知られるようになった。』
 
 という事です。娘の生き血ではなくウシさんの血液だったのです。もちろん同じ哺乳類だから人の血液でも出来るでしょうが、手に入れる困難さを考えるとまず無理、商品にするには希少高額すぎるでしょうね。
 
 血液から出来た未知の物質の結晶という事で名づけられたのが『赤血塩』、なるほど赤い血液から作られ、結晶も赤いからぴったりのネーミングですね。
 
 赤血塩のその後ですが、これは鉄イオンを含んだ溶液に混ぜると鮮やかな青色を呈することがわかり、その青の沈殿物が『ベロ青』と言うわけです。赤い血液から作られながら鮮やかな青の顔料になると言うのはなんとも不思議なことです。
 
 ウシの血ならば18世紀の欧州の都市近郊では市民の肉の需要をまかなうため多量の家畜が屠殺されていましたから原料として事欠かなかったでしょうね。またイギリスのジョン・ウッドワードによって製造方法が公表されましたから、世界中に製造が普及しました。
 
 だから江戸時代も天保時代(1830年代)になると長崎を通して入ってくる「ベロ青」も以前よりずっと安くなっていちまい数十文の木版画にも使用できるようになったのです。
 
 19世紀の中ごろ、石炭化学が発達するまではこのような化学薬品である赤血塩をはじめとして他の化学薬品でも、農業や畜産業の廃物から作られていたものがあったのです。
 
 最後に意外なものから作られていた薬品の三択問題を出してこのベロ青についてのお話は終わることにします。
 
 江戸時代、鉄砲などに使われる火薬の主原料である「硝石」(硝酸カリウム)は何から作られていたでしょう。
 
 1、ひまわりの根や茎を燃やした草木灰を処理する
 2、白骨化した骨を砕いて処理する
 3、糞尿を処理する

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