ロシアがあぶれもののコサック兵に大砲や小銃を持たせ何の罪もない原住民を武力でブチのめし、せっせとユーラシア大陸の東方へ植民地をのばしていたころ、日本は極めて平和な国でした。1615年に大坂の役以後国内での戦争はなくなります。また海外での武力の行使も慶長の朝鮮役以後なくなります。そもそも日本人の海外渡航が禁止されるのですから、力ずくで海外へ押して出るどころか平和的な商業活動も出来ません。
だから以後は何にしろすべての活動は国内のみでやっていかなければなりません。そうだからといって日本人の活力が停滞したわけではありません。日本人の力が内向きになったからこそ、この時代、大型河川の広大な流域にある手つかずの沖積平野の灌漑や開墾に精をだし、農業生産力をドンドン高めました。基礎支えである農業生産力が飛躍的に伸びるということは、人口も増え、また農業以外の生産も増えます。これは同時に商業の発達も促しますから、この時代(江戸時代初期)は高度成長の時代と言ってもいいものでした。
開発されたのは河川の沖積平野ばかりではありません。日本近海にある豊かな漁場も開発されました。もちろん漁法の進歩、漁網や船の改良があったのは言うまでもありません。特に伸びが著しいのが北方域の漁場です。蝦夷地近海(海だけでなく蝦夷地の河川漁も含む)の漁獲量は大きく伸びます。
北海の海産物で主力商品というと、中世から知られた有名なものに『鮭(干鮭・塩鮭)』、『昆布』があります。江戸時代になってこれに鰊製品の『身欠き鰊』や『〆粕(しめかす)』が加わります。あれれのれ!ワイらの好きな、ウニ、ホタテ、イクラはどうなっとんじゃい!と言われましょうが、何せ、江戸時代ですから、冷凍保存術なんぞありまへん、乾物や塩モノにできないものは地元から遠く離れて運ぶこと自体が難しいです。イクラがいくら獲れたって大消費地(大坂、京、江戸)まで運ばにゃ商品になりませんわ。
この時代(江戸時代)蝦夷地でもこのような全国に流通するような商品が出てきますから、古くから商品作物生産が発達したワイらの住んどるあたり、瀬戸内海・四国沿岸地域なんかも全国に流通する商品作物をドシドシ生産し流通にのせます。ウチんとこの商品作物で、超有名なのが阿波の『藍』があります。染料ですね。インジゴブルとして今でもこの染物のファンがいますが、江戸時代この商品の全国占有率はなんと!90%以上、強力な商品です。これが有名になってウチらの他の商品が霞んでいますが、江戸時代から三白といって、白い色をした商品が三つありました。『砂糖』(阿波三盆糖)、『塩』(撫養の塩田製)、『小麦粉』です。
こんなふうに北から南から全国流通商品がワンサカ出てくるのですから、当然、流通も盛んになります。今ですとコンテナフェリかコンテナトラックでピュッと運ぶのでしょうが、この時代大量輸送は船でした。ウチらの地方と蝦夷地を結ぶ流通なんかはさぞ大変だっただろうと思われますが、それがそうでもないんですね。江戸初期に開発された北前航路を取れば安全にスムースに南北の商品の流通ができたのです。
その航路を示します。
大坂から出発し淡路島をかすめ我が鳴門にも寄港し(もちろん途中の港を都合でスッ飛ばすことはあった)瀬戸内海を西航し、関門海峡を抜け日本海を北上し、蝦夷地へという航路です(上りはもちろん逆です)
北前航路の船(北前船)の積載量は、米でいうと千石くらい積めた当時としては大型船でした。下がその北前船です(現代に再現したもの)。一枚帆ですがけっこう大きなものですね。
行きかう北前船
北前船は積荷を目的の港に一気に運ぶ場合もありましたが、多くは上の航路地図の寄港地にこまめに出入りし、船頭の才覚で積荷の商品を売ったり、また寄港地で商品を買ったりしていました。そして冬の季節風の時期を避けて数か月かかって蝦夷地まで商売をしながら北上したのです。
漁場が開発され、海産物商品が多量に供給され、南から多くの北前船がやってくるようになると江戸初期には辺境扱いされた蝦夷地南部でも和人の人口が増え、上記の松前、江差の町は大発展します。その賑わいは江戸以上だと、言われたくらいです。
その発展は鰊漁場の北上とともに日本人の活動範囲、そして日本領域についての認識を蝦夷地よりもまだ北に押し広げることになります。江戸中期になりますと蝦夷地よりまだ北の『北蝦夷地』(樺太・サハリン)にも和人(松前藩やその請負人)によって漁場や交易所が開かれます。
そういえばこの北前船の北方コース、二年前の春に旅行しました。その時、撮りためた動画・写真がありますから次回はこのブログのテーマでもう一度編集して見直してみます。リンちゃんの登場がますます遠のきます。
連日、猛暑が続いてどうにもモウショウがないので、冷房の効いた図書館ブースで、深浦(青森日本海側)や江差、松前、函館などの北前船に関する動画写真を貼り付け、北方旅行の旅愁を交えつつブログづくりを楽しみたいと思っています。
つづく
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