今朝7時半のバスに乗って神戸に行ってきました。目的は神戸市立博物館で開催されている北斎展です。たっぷり時間があれば山手の方や有馬温泉などにも行きたかったのですが、3時過ぎのバスに乗って帰る予定なので行けませんでした。
この北斎展の作品の多くは日本の博物館の所蔵ではありません。アメリカのボストン美術館から借りての展示なのです。日本の貴重な文化財である浮世絵はなぜか多くが外国にあるのです。なんでそういうことになったのでしょう。
それは明治維新のときに近代化を急ぐ余り、日本文化、その中でも江戸庶民文化の精髄である浮世絵は、欧米の絵画に対して劣ったものであり、目指すべきは西洋風の絵画だ、というような風潮があったのです。
そのため文明開化の世になると木版画の浮世絵は価値のないものとして見られました。江戸時代においても木版画として量産されていた(初版摺りで500部)浮世絵は安くて庶民に手が届くものでした。その値段は大判の錦絵でも32~48文くらいです。当時、かけ蕎麦が一杯16文でしたから、蕎麦2~3倍の値段で手に入ったのです。
もともとそんなに安い大衆向けの作品でしたのに明治になるとますます価値が下がり、ほとんど二束三文の紙くず同様の値段で売られました。実際に紙くずとして輸出用の高級陶器が割れないように梱包するときの古紙として巻かれました。
明治初年に浮世絵はどんどん価値が下落し、紙くずとして反故にしたり、ただ同様で手放したりしたのです。むしろその美しさに見せられてどんどん買い求めたのがやってきた欧米の美術愛好家でした。彼らが感じた浮世絵の美の衝撃は今でも語り草になるくらい大きなものでした。この浮世絵がヨーロッパの後期印象派に与えた影響は皆さんもご存知ですね。
今回の葛飾北斎の浮世絵は約150作品ほど展示してましたが、館内撮影は禁止なのでその中から特に私が選んだ3作品をウェブ上から参照してご紹介します。
海外でも大人気の富嶽三十六景より『神奈川沖浪裏』。200年も昔の木版画だがその斬新には驚きを禁じ得ない。浪に飲み込まれそうな人と船でいったいどうなるのだろうとハラハラさせるが、なぜか遭難するような危うさは感じさせない。人事と自然がしっくり調和していて遠くに富士が見える構図は北斎の最高傑作であろう。
『赤富士』大変縁起のいいものらしい。持っているだけ、いや見るだけでも幸運を呼ぶという。「赤」と「富士」の霊力がそうさせるのだろうか。
富嶽三十六景より私の好きな『駿河江尻』、強風に旅人の荷(紙屋さんだろうか)の紙が風に舞っている。吹き飛ばされまいと笠や合羽をおさえ身を低くして旅人たちは風の中進んでいる。
風景画ばかりでなく北斎はこんな紙のおもちゃの版画も作っている。昔、ワイの子どものとき少年月刊誌に入っていた紙で作る付録のおもちゃみたいだ。
この一枚の版画、ハサミで形にそって切り取り(人物、建物、その他)、糊で貼って組み立てる。
そうするとこのような立体的なものになる。
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