2019年5月28日火曜日

鎌倉末期の絵巻物の庶民

20170529


 教科書で見る源頼朝の肖像画である。最近は頼朝でなく別の人であるという説もあるが、この時代・鎌倉期の肖像画はこのようなものである。特に頼朝のような身分の高い貴人は画一的で定型的にえがかれている。さすがに平安期のようないわゆる「ひき目、鉤鼻」、いっちゃあ悪いが子どもの「へのへのもへじ」のようなお決まりの顔を描くのに比べれば写実的には幾分マシかも知れない。

 しかし、名もない庶民に対しては(重要ではないように)風景の一部のようしか出てこない絵巻物には驚くほど活き活きした庶民が描かれている。下は鎌倉時代の絵巻、平治物語絵巻であるがこの中に曲げ桶に水を汲み両手に下げて運んでいる庶民のおばさんが描かれている。



 顔を拡大すると


 なんか~、どこの近所にもいるオバはんそっくりである。

 次も同時代の絵巻物である。下っ端の野武士、あるいは鎌倉時代に流行った「悪党」のこれまた下っ端であろう。黒沢明監督の有名な映画(時代考証に非常に優れているといわれている)『七人の侍』に出てくる野武士たちにそっくりであり、顔の表情、動作もたいへんリアルである。特に左端で弓を引き絞る男の顔の表情、体全体にみなぎるダイナミックな動作などは、「七人の侍」のスチール写真かと思うぐらい実写性がある。


 また絵巻物を見ていくと見逃しがちな風景の中に思いがけないものが知れることがある。鎌倉時代の農作業はどういうふうに行われていたなどはなかなかなかわからないが、下の絵巻物の遠景に牛に犂を牽かせて田を耕している農夫が描かれている。


 ワイの子どもの時、昭和30年代、これとおんなじような牛、犂で田畑を耕していた。つまり、この農作業の姿、昭和30年から800年前もおんなじであったことがわかる。

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