一月から二月にかけて病気でほとんど死にかけていた。余命は長くても後半年ほどと覚悟したが、幸いにも何とか回復し、ちょっとした旅行くらいには出られるようになった。そこで残り少ない現世と後生のご利益を求めて奈良東大寺大仏を参拝した。
華やかな姿の観光客が多く、ワイのように半病人の体で杖にしがみつきながらよろぼい参る小汚い爺なんかは見かけなかった。ゼイゼイヒ~ヒ~いいながら南大門に着く。
ここには鎌倉期再建の国宝金剛力士像がある。保護のネットがあり、また暗くて見えにくかったですが風化劣化を防ぐためには仕方ありませんね。
拝観料500円を払って回廊の中に入る。大仏殿の全景が見えてきた。
近くで見上げると確かにデカイ、確か世界最大の木造建築物とか言ってなかったっけ?それでも奈良天平時代創建時の大きさは今より30パーセント増しというからすごい、古代の技術はたいしたものだ!
みすぼらしい田舎の爺が大仏の前に立ったとき、900年も昔、やはり信濃の大田舎から杖を頼りにここを参拝したある婆さんを思い出した。そんな大昔の田舎のババアがなんでオイラの頭にイメージとして浮かんだのか。それは今に残る『信貴山縁起絵巻』によるものだ。下図がそうだ。平安時代の信濃からはるばる大和へ出てきた老尼が東大寺大仏を参拝している。(下図はクリックで拡大できます)
この絵巻が作られたのは遅くとも1160年代と思われるので平家騒乱より前である。焼ける前の創建時の大仏のままだ。だからこの絵巻の大仏のお顔は天平創建時を写したものである。(鎌倉期再建の大仏のお顔は以前と違っていると当時の貴族の日記に書いてあるのでこの絵巻の大仏のお顔は創建時の大仏を知る手がかりとなる)
そして大仏殿の中に入る。
つづく
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