モラエスさんの『徳島の盆踊』に徳島市民の信仰が特に篤いとしてとして紹介しているのが「おむつ」の祠である。このおむつの祠はしょっちゅう、昼も夜も開帳していてお参りする人が途絶えることなく繁盛していた。一番いいお客は(つまり賽銭や祈祷料、護符の購入などに金を一番費やすという意味だろう)水商売の人、「おかみ」、「げいしゃ」である。と書いている。
モラエスさんは「おむつ」神について彼なりに調べているが、この神の正体についてははっきりとはわからなかったようである。そして、たぶんお参りする信者から聞いた話だろう、次のように述べている。
『なんでも、この神は女狸の神であるが、どんなことでもその願いを聞き届けてくれることと、この神が「あぶらげ」や魚のフライを特に好くことだけがわかっている。信心する者が付近の店でテンプラやあぶらげを買って祭壇に供える。鼠がそれを腹いっぱい食べる・・・で、あの祠の鼠は徳島近辺で一番肥えている。そこの坊さんは坊さんで、鼠が食べのこしたテンプラを売って、いい金儲けをしているそうな。』
下が現在のおむつの祠である。(現在は御睦経王大明神というそうだ)
私もお参りしたが、賽銭箱の横に、自由にお取りくださいと大明神縁起のパンフレットが置いてあるので頂いて内容を読むと、狸の御神体説は否定している。縁起によると大昔の慈悲深い姫君が亡くなった後、人々に慕われて祀られたとある。しかし100年前の人々は、狸の神様と思っていたのだろう。だからあぶらげやテンプラをお供えしたのだ。鼠の話も、また祠の坊さんがお供えしたテンプラを売ったというのも、本当かどうかはわからないが、人々はそうゆうふうに噂したのだろう。こういう肥った鼠だの坊さんの隠れた商売だのの話は噂話としては大変面白く流行りやすい。
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