2011年1月20日木曜日

北越雪譜その2

 今日は大寒、これから立春までの二週間くらいが一年で一番寒い。私の住んでいるところは四国で太平洋側だから、寒いといっても乾燥した季節風が吹いて、乾燥し、朝晩冷え込むだけである。早朝は氷が張り、時たま季節風が強くなると雪も降るが、おおむね寒中は好天が続く。
 しかし、今読んでる「北越雪譜」の地方である越後の魚沼郡は日本の最深雪地帯である。冬は東北地方に近く、内陸にあるため気温も低く、日本海側にあり、後ろに脊梁山脈を背負っているため、曇天か大雪でほとんど太陽を拝めない日々が続く。

 今でももちろん豪雪地帯だが、江戸時代はもっと気温が低かったみたいで、今以上のドカ雪であった。本の中に1~2丈積もるのも稀でないと述べている。一丈は約3メートルなので、3~6メートルの積雪である。
 雪国越後の中でも、著者の鈴木牧之がいた魚沼郡塩沢は頸城郡高田(今の上越市の内陸部)とならんで積雪の多いところである。世界的にもこれだけ雪の降る所はない。ふつう気温が下がれば空気中の水蒸気も減るし、海や陸からの蒸発も減る。そのため冬はそれほど降水量は多くならない。シベリア、北極はこのため降雪は至って少ない。ところがこの地方は特異な地理的条件のため、九州や四国の夏の集中豪雨の月にまさるとも劣らない量の降水がある。気温が低く、シベリア気団の中でのこの量の降水は、当然、ドカ雪となる。

 先の頸城郡高田(上越市の内陸部)は城下町でもあり、江戸時代かなり大きな町であったが、大雪で埋もれることがあった。
 まあ、3~6メートルの積雪に町が覆われるのを想像してみてください。大げさではなく次のような話が残っています。
 飛脚が高田の町と思われるところにやってきたが、見渡すばかりの雪原のみ、ようやく、探しあげ、掘るようにして、飛脚の用をはたせた。飛脚は探し来る次の人の為に、杭に立札を打ち付け、見えるように雪原に挿し込んだ。
 「この下に高田あり」


 

 次にこの本の中に入っている面白い話で、実際に著者、鈴木牧之が体験したお話を紹介します。

「雪に座頭を降らす」
 
 座頭とは江戸時代のある職業の人です。盲人の職業集団の中のある階層を指す者でした。江戸時代目の不自由な人は職業がほとんど決められていました。琵琶、三味線、琴などの演奏家、あん摩や針などの治療師です。この話の中の座頭は、あん摩マッサージ師です。

 著者が友と連れ立ち、年越しの夜、かなり裕福な家を訪問し、もてなされていた。主人ばかりか主婦、若嫁、娘なども混じり、酒など酌み交わしながら歓談となった。婦女子がいて、こわごわ鬼の話を聞いてきた。地方によっては大みそかの夜は昔から「鬼やらい」といって厄を払うため鬼追いをする風習があったのである。この地方ではなかったようだが、そのような風習の話題となり、続いていろいろな鬼の話題となったのである。友人は婦女子がこわごわ聞くので興に乗ったか、悪乗りか、ますます、鬼のことを言いたてた。
  
 「外を鬼どもが徘徊してるに違いない。それ、そこの明かり窓から覗くかもしれんぞ。」

 とおどしているまさにその時、人々のすわっている後ろにこの地方の特有の人の背より高い位置にある、明かり窓より、バリバリ、ドドド、ザザザー、と物凄い音をたてて、雪とともに座頭が上から降ってきた。(と著者は表現している)
 さあ、ときが時だけに、驚いたのなんの、原文で再現すると
 「女はみな唖といひてうつぶしておびえまどい、男はみな立ち上がりておどろきけり」

 鬼ではなく福一という座頭・あん摩であることがわかり、主人、著者、友人ら男どもは、落ち着き、やがて笑いとなり、福一に怪我はないかなど、訪ねる余裕も出た。
 しかし、心臓も止まるかと驚いたあるじの妻は、腹立てて、原文によれば(江戸の当時とて、今から見ると差別的な言い方であるが)
 「めでたき大みそかの夜に、盲(メクラと訓じている)が窓よりふりこみしはいまはしきことなり、とくとく、出で行けとてしたたかに叱りければ・・・」
 と立腹が収まらない。そして、蹴破った高窓は正月の吉方にあたり、実に縁起が悪いと、よけい腹立てる。

 福一はかなり機転のきくあん摩だったみたいで、このままでは、悪印象が残ってしまうと懸念したのであろう、即興で次のめでたい歌を作り、詠った。

「吉方より福一というこめくら (米蔵と小メクラとかける が入りてしりもちつくはめでたし」 
 で一同感心し、福一は褒められ土産までもらったとある

 もちろんこれは体験に基づく実話である。家の座敷にいて、上から人が降ってくる話は、この地方ならではの話である。屋根の雪下ろしなどで、往来の道が家の軒よりも高くなったため、転んだ人は、なんと、人の家の一階に降ってくるのである。  

3 件のコメント:

yamasan さんのコメント...

 ううう~っ、さむ~い北越雪譜の話をしてますが、いまやまさんの部屋は北越雪譜の世界。ホットカーペットでお尻だけがぬくい。空気は凍りそう。
 ファンヒータは2週間も修理にかかる。
 暖かくなるのは風呂に入った後と、寝てるときだけじゃ。
 明日朝もうちの辺りはマイナス1度、今、部屋で5度だぞ~。そして夜中たびたびのションベン、冷えるからだ、くくくくくるし~っ!
 寒中の行をしてるみたいなやまさんじゃが、もう、こらえてほしいわ。

ワンピースファン ルフィと仲間たち さんのコメント...

2ヶ月で故障したので
家電店にファンヒーターの代替器を
依頼したほうが良いと思います。
しばらく寒い日が続くようですから。
体を冷やすのは良くないです。
相談交渉してみて下さい。

てるゆき さんのコメント...

今年は、ほんと寒いです。体調にお気をつけください。