2011年7月14日木曜日

つるぎ山 そのⅠ

まるでライラックのよう
 剣山貞光ルートの最奥の集落は桑平である。そこを過ぎれば人家は途絶える。

 その集落の辺りにはまだアジサイがきれいに咲いている。平地では梅雨が明け、アジサイも枯れているがこのあたりは冷涼でアジサイも元気に咲いている。
 その中で紫の小さな毬のようなアジサイが特に目を引いた。

 写メールでは美しい色が再現できないのが残念だが色といい形といい通り過ぎながら見ていると北海道のライラックのようだ。
めおと(夫婦)もどちらかが先に遷(ゆ)くのか
 一宇村にあるスキー場を過ぎると道はほとんど平坦になる。
 少し行くと標高は1400mを越える。そのあたりからは山が鞍部(馬の鞍状)になっていてそこを越えると剣山が見えてくる。
 その鞍部を横切る道を挟むように両側に2つの池がある。

 道の左にあるのが男池で上の写真である。下の写真は道の右側の女池である。
 名前からわかるようにこの池、ペアで「夫婦池」と名付けられている


 男池の方は満々と水をたたえているが女池はご覧のように水は枯れていて湿地状態である。
 面積は女池がうんと小さい。
 自然は長い年月をかけて土砂を堆積させ乾燥化し、湖~池~沼~湿原~平原というように変えていく。「遷移」と呼んでいる。
 これは自然の法則である。夫婦池の女池も昔は満々ときれいな水をたたえていたこともあったであろうが、今や雨季を除くとご覧のように乾燥化が進み、湿原のようになりつつある。
 もともと小さい池だったので「遷移」がはやいのだろう。
 大昔の誰が夫婦池と呼んだのか知らないが、夫婦のようにいつまでも変わらぬ2つの池の姿を願ったのではあるまいか。
 しかし、女池が先に遷(ゆ)く。自然の法とはいえちょっと切なくなる。
めづらしい植物をみた
 女池の写真を撮って道に帰ってくると近くのロッジの主人が声をかけてくれてめづらしい植物を教えてくれた。
 下の写真がそれである。後でみたら露出がまずくうまく撮れていない。非常に変わった形をしていてもちろん見るのは初めてである。
 全体が茶色っぽく、葉緑素がない。しかし大きくて幹に当たる部分はかなり固く木質みたいな感じだから「菌体類」(きのこの仲間)ではないようだ。
 このロッジのご主人、かなり植物に詳しいらしく、大体見当をつけているみたいで、ロッジに招かれ、一緒に植物図鑑やインターネット(こんな山奥でインターネットが通じていて触れることができたのに大感動しました)の画像検索結果を見た。なぜかついでに私の桃山日記もロッジのご主人と一緒に見た。
 そして、おそらくこれは「つちあけび」ではないかという結論に達しました。


下はロッジでみた植物図鑑、こちらは実がなっている状態。

「腐生植物」の一種という。葉緑素がないため「光合成」はできない。当然、従属栄養によるのであろうがそれは「共生菌」に依存してるとのこと。
 「う~ん、むつかしゅうて、その仕組み、よおわからん!」
 ウィキペディア(百科事典)によると
ツチアケビ (Galeola septentrionalis Reichb. fil) は、森林内に生育するラン科植物である。ラン科植物として、また腐生植物(菌従属栄養植物)としては非常に丈が高く、しかも大きな真っ赤な果実がつくので、大変人目を引く植物である。日本固有種。
 だそうである。
森の王様の木は
 四国の平地部は気候・植生では「照葉樹林帯」と呼ばれていて四国の広い面積を覆っている。剣山のこの辺りは「落葉広葉樹林帯」である。四国山地の高山に現れるため面積も照葉樹林帯にくらべれば広くない。
 その「落葉広葉樹林」の代表種は「ぶな」である。
 しっかりと大地に大きな根を張り、その根で森の土や森の水分を守る。そして秋の落葉やその実によって幾多の動物・植物を育てている。
 幾抱えもある大きな幹、灰色の樹皮でところどころ苔むしている。そのどっしりして見上げるようなブナの巨木は
 「森の王様だ」


さいごにダケカンバの疎林が
 森を構成する主要な樹種は気候によって決まってくる。1450mの見ノ越からえっちらおっちらゆっくり周りを観察しながら登るとその気候が標高が上がるにつれ冷帯、寒帯に近づいているのが木を見ることによってわかる。
 気候の垂直分布を表すのには冷帯、寒帯(こちらが私にはわかりやすいが)というよりも「亜高山帯」、「高山帯」という言い方をする。
 剣山は2000mはない。この高さだと高山帯は現れない。
 1900mから上は樹木は少なく熊笹が覆っている。その1900m付近にダケカンバの疎林があった。
 ペラッとめくりたい誘惑にかられそうな(決してしてはいけませんよ!)樹皮、白樺に似た葉の形が特徴の木である。

 これより高くなると下のように樹木はなく熊笹の原、「平家の馬場」というそうだ。頂上のベンチが見える。

>>ロッジのご主人さんへ
 珍しい植物を教えていただき、いい勉強になりました。またロッジでお茶までごちそうになり恐縮しております。
 ロッジでネットができることに驚きました。ウェブ網は日本津々浦々山奥まで覆っているんですね。
 次回はお客として売り上げに貢献したいと思います。
 これから忙しい季節を迎えますがお体をおたいせつに。ロッジが増々繁盛することを願っております。
 どうもありがとうございました。

2 件のコメント:

Unknown さんのコメント...

 師匠!ついに霊峰剣山へ行かれたんですね。修験道時代を思い出されたのでしょうか?それとも、ソロモンの秘宝目当てですか?それはさておき、歴史とか植物に詳しいと、、旅もいろいろ楽しめていいですね。うらやましい~。連日の山歩きでお疲れでしょうが、今日は師匠に感謝する日なので、ゆっくり御くつろぎください。 Jai Guru Dev

yamasan さんのコメント...

 車の使用期限がありますので狂ったようにあちこち行っております。やがて乗れなくなるので。

 月末にはまた定期を買って徳島での自転車の放浪が始まります。一応、名目は職探しなんですけど、犬・棒や棚ぼたもちはないですね。しんさまは技術系の資格が大きくものを言いましたね。こういう資格は強いですね。

 昨日ロッジのご主人と少し話したんですけど、山小屋のペアレント・お父さん・管理人、名称は何でもいいですけど、こういう仕事いいですね。
 昔からあこがれがありました。旅人と話ができるし、山を自由に歩ける。素晴らしいと思いませんか。

 あそうそう、技術資格って言いましたが、わたし昔、安全靴を履き、作業服にヘルメット姿で山を縦横無尽に歩く仕事の「測量士」のかっこよさにあこがれ資格まで取ってしまいました。
 しかし、冷静に考えれば私に、山歩きの測量なんかできるはずありませんよね。でも、今から・・・あダメ、資格だけで、全部わっせとる。

 山がダメなら海はどうかなぁ~。去年R学園で訓練を受けた子が今年も「海の家」で働くって言ってました。ビーチボーイならぬビーチ爺さんはどうかいなぁ~。

 などと、酢だの蒟蒻だのいうから、いつまでも仕事ができん。

 山歩きで実は、足の筋肉が痛くてかなわん。痛みでくつろげないよ~(;_;
 今夜は散財して温泉にでも行くか。