2012年4月18日水曜日

メリケン流行歌小史学習ノート 4頁


 なぜか日本の演歌にこのブルースという言葉が冠されているものが多い。昭和40~50年代にかけて、ご当地ソングといわれる演歌に〇〇ブルースというのがある。
 日本の歌謡曲でブルースとつけられて歌った最初は淡谷のり子の「別れのブルース」といわれる。(1937年だから古い) これなどを聴くとアメリカのブルースの影響を受けているなぁ、と感じるが後のご当地ソングブルースなどは、哀愁を帯びた4拍子のマイナー曲をブルースと呼んでいて、本来のブルースとは別物。
 わかれのブルースクリック

 奴隷解放宣言後も黒人は厳しい農作に従事するが1890年代になると南部の黒人たちは都市へ出て職を求めるようになった。
 彼らの職場環境、住環境は劣悪であったが、都市には仕事は常にあり、大勢の仲間といるという安心感もあった。その結果、さびしいフィールド・ハラーやワークソングに代わって感情を直接歌い上げる即興性は残したまま、音楽をより強烈に、より表現力に富んだ都会的なものにしていった。
 その中で和音、リズム進行などに都会的な洗練が見られるようになり、次第に定型化、標準化されていき初期へのブルースとなって行くのである。

1、ブルースの基本形とメロディの特徴  

 ブルースの構成は3行の詞からなっており、A-A`-Bという構成でそれぞれが4小節で出来ており、計12小節という単位が1コーラスの標準形式である。ただし、初期はまだ一定しておらず長短がある。

 コード進行は最初のA4小節[Ⅰ-Ⅰ-Ⅰ-Ⅰ] 次のA`4小節[Ⅳ-Ⅳ-Ⅰ-Ⅰ] 最後のB4小節[Ⅴ7-Ⅴ7-Ⅰ-Ⅰ]というのが原型で、これをもとに様々なチェンジ・コードで演奏される。
 メロディーは音階の第3音、第7音、まれに第5音が約半音フラットし、独特の哀愁感を醸し出す。
 これらの3つの音をブルーノートといい、コードの構成音にも影響を与え、この独特のサウンドがブルースの大きな特徴となっている。
 実際によく使われるコード進行を示す。上記の原型は原則であり、現実には少し変えている。ハ長調で記す。

 ブルースを構成するA-A`-Bという一種の3部形式は、Aはテーマの提示、A`はその反復、Bは提示に対する結論、という役柄で1コーラスができている。
 初期のブルースの形が残る曲を貼っておきます。「Trust In Me」ここクリック

2、カントリー・ブルース  

 ここでいうカントリーは南部の田舎である。ミシシッピ・デルタやテキサスのなんぶ2大地域がその中心である。フォークブルースと呼ぶ場合もある。

1、テキサス  
 ブラインド・レモン・ジェファーソン、1920年代を代表する盲目のブルース歌手。代表曲を紹介します。
 「Black Snake Moan」クリック

 レッド・ベリー、主に12弦のギターを弾いたが他の楽器も弾いた。あらゆる民謡を歌うフォークシンガーとして放浪しながら古くから伝わるバラッドなどを歌った。
 「Alberta」クリック

2、ミシシッピ・デルタ 
 この地帯は黒人の人口密度が高く、貧困、白人との交流もないところから、最も強烈な感情を込めたブルースが豊富に存在する地域となっている。他地域と比べると古風で、歌声は暗く、重く、深い感情を込めた歌は、締め付けられたような唸り声のようでもある。いくつか紹介します。

Highway49 


3、シティー・ブルースからシカゴ・ブルースへ 

 アメリカの経済構造が農業から商工業へ発展するのに伴い、1920年代になると、南部の農業地帯から黒人たちは続々と年に移り住むようになる。より洗練されたブルースが形成されていった。
 南部のブルースマンたちもレコーディングのため都市へと赴き、都市とのブルースの交流が見られ、徐々に音楽的に進歩していった。

1、ブルースの伝播 
 ブルースは都市に住む黒人たちの間にも広がり、学校を出た黒人たちの間にも浸透していった。
 リロイ・カーはピアノを弾きながらブルースを歌いシティー・ブルースの先駆けとなった。
 リロイ・カーの代表曲を貼っておきます。
 

2、レース・レコード 
 レース・レコードは黒人の音楽専門に作られた78回転のセラミック盤で20~30年代に多く作られた。レースとは人種のことで、黒人の音楽で構成されていた。しかし徐々に白人たちにも注目されるようになる。

3、クラッシック・ブルース 
 20年代になると、女性シンガーがシティーに登場する。この女性シンガーの歌うブルースをクラッシック・ブルースという。マ・レイニー、ベシー・スミスが有名である。


4、シカゴ・ブルース 
 30~40年代、にかけてシカゴスタイルのブルースが成長し発達していく。


4、ブルースのその後 

1、ブルースの通俗    
 ブルースが声楽音楽として発生したのとほぼ同じころ、器楽音楽としてラグタイムが生まれている。このラグタイムの要素を取り入れながら、大衆性と商業性を帯びたブルースが生まれる。
 そしてフォーク・ブルースの本質であるはずの個人的感情を歌い上げるという精神は影をひそめてしまい、不特定多数の一般大衆を意識した計算されたブルースを作る専門の作曲家が現れてくる。
 ここにおいてブルースは商業的に完成された都会の音楽になり、さらにブロードウェイ・ミュージカルやハリウッド映画に取り入れられるにいたる。
 当時、もっとも人気のあったブルースを貼っておく。

2、ブルース・コンテンポラリー  
 ブルースはもともとA-A`-B(各4小節)という12小節で構成されるが、このコンパクトな3部形式はポピュラー・ソングやインストルメンタル楽曲に応用しやすい構造といえる。その結果、本来のブルースとは全く関係なく、この形式だけを利用した様々な曲が生まれている。
 ブルースの形式をとっているが、本来のブルースから離れたポピュラー曲をいくつか紹介する。

4 件のコメント:

WHOchan さんのコメント...

ブラック・ブルースが多いですね。ブルースは白人も歌っていますがそれでは真に迫るものがたりないのでしょうか?

日本人にもブルースミュージシャンはいますがなおさら物足りないのでしょうか?

自分はロックが好きですがブルースの歌えないロックミュージシャンはまずいません。

ついでに邦楽バージョンもお願いします。なぜなら、歌詞の意味が分からないと何も語れないしわかったフリになってしまうからです。

Unknown さんのコメント...

ブルースって、こんなに沢山の種類があったんですね!知りませんでした。コード進行のパターンがみな同じなんで、誰もか演奏しやすいんでしょうね。ロックギターを練習する場合、最初に覚えるのがこのブルーノートスケールです。このスケールでアドリブをすると、なんとか曲になります。ですからロックの原点のような気もします。(^_^)♪

yamasan さんのコメント...

>>MOTOさんへ

 MOTOさんの方が私よりずっと詳しいと思います。
 学習ノート形式でここまで勉強してきて、ブルースとジャズの違いも実のところよくわかりません。ブルース、ジャズ、ロックがあたまで渾然一体となっています。
 この後、ジャズに進むんだけど、少しでも区別がつくようになればいいですね。

 いろいろ教えてください。

yamasan さんのコメント...

>>しんさま

 一応、勉強のためやってますが、この歳になると、どちらかというと青江三奈の「長崎ブルース」とか西田佐知子の「東京ブルース」を聴きたいです。

 次回からはジャズになりますが、せめてブルースとジャズの違いがわかるようになりたいですね。