2024年10月14日月曜日

ポスターと生成AI ここまでできるんか?

使われたこのポスターは生成AIによる可能性の一参考例として使ったもので、このポスターが生成AIによって描かれたものであると断定しているわけではありません。


 このポスターの絵を見たのは県庁のロォビーだった。広報用にたくさん置いてあるポスターの一つであるので一枚もらった。一見して強い印象を与えたので手に取りよく見た。イラストの人物が、他のポスターに使われている人物イラストとずいぶん違ったクセのある特徴を放っているのだ。計五人がボートに乗っている。うち小さく描かれている四人はなぜかちょんまげ、高島田の結髪の江戸時代の格好風俗である。そして水先案内人か船長だろう大きな人物はベレー帽をかぶった現代的な恰好である。時代的なチグハグ感が不思議な雰囲気を醸している。そして船長・水先案内人とみられる人はまるで歌舞伎の荒事の見得・六方のように手を広げているのもさらにわけのわからない不思議感をもたらしている。

 しかし、しばらく見ていると、この強いクセのあるイラストはどのような素材で構成されているのか見えてきた。なぜこのようなイイかた(なんで創造的な芸術家のクリエイチブな仕事を、どんな素材で構成されているか、なぞとと失礼になるような言い方をするのか)をするのかというと、このようなポスターのイラスト・絵画を作るのは「生成AI」がもっとも得意とするものだからである。AIの絵・イラストの生成はAIが持つ膨大な絵、写真、イラストの蓄積の上になされる。その生成をスタートさせるのは人の「言葉による指示」である。「画家の〇〇氏の作品風に、これこれこういう要素をいれて描いてくれ」と言っただけで、早ければ数秒で描いてくれるのである。そして気に入らなければ、あるいは想像していたのと違っていれば、再度入力すれば違った絵を出力してくれるし、指示を少し変えて絵を変化させることもできる。

 上のポスターのイラストはまさにAIが生成したらこうなるであろうなという、私のAIによる絵画イラストのイメージにピッタリ一致するのである。実のところ、このポスターが作家が独自に考えたものか、あるいは私が一方的に持ったイメージのようにAIによるものかはわからない。しかし、人であってもAIであっても、ある過去の素材に強く影響されて作品を作るというのはあることである。丸っきりのコピペなどは論外だが、どのような偉い画家さんの作品であっても、その画家の脳内のメカニズムはわからないが、過去の他の作品、あるいは素材に何らかの影響を受け、それが脳内で消化され創作に結びついているものである。発達した生成AIは膨大なデータの蓄積の上に、芸術家の脳内と同じように、プロセスを踏み、作品を作っているのなら、もはやAIと芸術家の差はほとんどなくなるのではないか。

 それではこのポスターを生成AIがつくったことを仮に前提として、そのプロセスを逆にたどり私なりに分解して、その具体的指示を推定してみよう。

1⃣ 主題が水上タクシーのポスターであるので、デフォルメされている水上タクシーがある。それには乗客、当然乗務員(船長)も乗っている。

2⃣ 背景は吉野川、新町川・市街、眉山でいいだろう。単なる滑らかな水上ではなく、波があれば動的な感じが出せる。素材として北斎の「神奈川沖の浦波」を使うとインパクトは大きい。

3⃣ さて人物イラストのタッチ・特徴であるが、古い、漫画創成期の作品を参考にすれば若い人は知らないので、むしろ新鮮で異彩を放つ。そこで昭和30年代の貸本期の作家で適当な人を探す。

  このポスターのイラストをしばらく見ていて、わかった。私は昭和30年代の貸本屋の漫画を知っている世代なので気づいたのである。これ当時「杉浦茂」の名で活躍した漫画家の絵に似ている。下がその漫画である。人物イラストのタッチもよく似ているが、注意してほしいのは、両手を不思議に曲げた形で頭の上に上げている格好である。これは上のポスターの船長の両手の形に通じるところがある。

 とするとAIの指示に次のような具体的名前を加える。

4⃣ 参考とする漫画家は「杉浦茂」とする。特徴的な両手の形も取り入れる。

 この 1⃣  4⃣  の指示を絵画イラスト生成AIに入れるとおそらく上のポスターとよく似た絵が出来上がってくると思う。

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