2010年12月30日木曜日

年の暮れ列車風俗化粧(けわい)考

 今年あと一日となった街は気ぜわしく買い物をする人、その車であふれかえっている。正月と言っても特になんの準備もしない私はそんなことに煩わされることもない。師走の風に吹かれたくて家を出たが、風流にかぜに吹かれるにしては、今日はちと、寒い。悪天を見越し持ってきた傘を杖のようにコツコツ突きながら歩くが、あまりにも風が冷たい。家を出たときはどちらにしようか迷っていた徳島行だが暖房の利いた列車にとりあえず乗りたくなり、駅へ行く。
 徳島へ行く10時過ぎの列車はいつもより混雑している。高校も休みになっているためか、若い男女が多い。学校も冬休みでみんな私服、やまさんの高校時代は休みでも制服でした。昔でも堅苦しくて嫌でしたけど、こじゃんとした私服なんかほとんどの生徒はもってませんでしたわ。
 最近の若い人のおしゃれのセンスは素晴らしいものがある。列車に乗っている中高生の坊ちゃんや嬢ちゃんの、髪型、髪の色や服装、ブーツやらカラフルなスニーカー、手にするバッグ、袋物、小物の数々にいたるまで、みんな個性的かつ工夫も様々で、列車の中はさながらファッションショーのようなもの。おまけに通路を通るとなにやらいい匂いまでする。あれはいったいなんの匂いだろう。女の子よりむしろ若い男の子の方が良い香りがする。香水か?鬢付け油か?麝香系の香りのような気がするが。
 それにしてもハイティーンの男の子のおしゃれな服装と女の子のような肌、そして髪の手入れの見事さには驚きます。でも、私は男伊達には大賛成。年配者の中に何かと文句を言う人もいますが、はっきりいって間違ってます。50年も前、ピーコック革命と称し(孔雀はオスが美しいところからきている)男も着飾るべきだと主張されましたが、なかなか一般化されませんでした。男が着飾るのはおかしいという偏見がまかり通っていたからです。ようやく最近の男の子はそのくびきから自由になったのは喜ばしいことです。わたしはもっと過激なファッションでもいいと思います
 
 その過激なと思えるファッションの男の子、現にわたしの坐っている近くで、二人立ってます。私から見れば童顔のかわいい子に見えますが、本人は何やらむつかしそうな顔つきをして、どうみてもあるふりをしようとがんばっています。こんなのがいわゆる「つっぱってる」ていうことなのかな。
 ジーンズの一種だと思うんだけれど、ベルトとともに膝に近い辺りまでズボンをずり下げていて、そのため後ろを見ると海老茶に小紋の入ったかわいいパンツが丸見え。もう一人も縹色の粋なパンツがはっきり見えます。若い男の子はズボンをずり下げて穿く傾向にあるけれど、これは極端な穿き方です。
 「やりなさい、やりなさい、」
 こころから拍手です。着飾ることは生きる喜び。日本人は昔から男でも過激に着飾ってきました。中世は、異形・異類の人、風流人と言われ、近世では傾く(かぶく)者と言われました。世界史でも男が着飾るのは当たり前、その中で男伊達をうんだ江戸は最先端。世界の伝統演劇の中で歌舞伎のあの目も彩な衣装を見ても、いかにわれら日本人の若い男は飾りたがったか、わかるでしょう。
 中世歌謡にある
「くすむ人には見られぬ、夢の世を くすんで何しょうぞ 一期は夢よ ただ狂え」
 です。
 こんなズボンをずり下げてパンツ丸見えのファッション、胴も信じられないほど細く引き締まり、小さくてキュートなお尻をもつ16,7歳の男の子でなければできないでしょう。(そら、おっさんがしてもええけど、私には美的には見えん) まさに今のみ、夕べとともにしぼむ美しい花なら、今を大切に、着飾らにゃ、狂え、狂え、楽しめ、楽しめ!

 こちらのボックス席ではアイシャドーかマスカラか知りませんが若い女の子が手鏡を見ながら盛んに化粧。この行為も何かと物議を醸しましたが、こちらも皆さん微笑ましいではありませんか。列車の中で若い子が一心にお化粧をしているのをみると私は歌舞伎の舞踊劇「娘道成寺」のセリフを思い出します。
「恋の手習いふと見習いて、誰に見しょうとて紅、鉄漿(かね)付きょうぞ、みんな主への心中立て」
 恋し愛しい男をいちずに思い、見習ったばかりの紅、白粉をつけるのもみんなあなたのためだけ。なんとけなげで美しい恋心、見上げたものです。
 年配の人はこのような行為をはしたないと見る傾向があります。しかし、恋の一途さがなせるわざとおもえば別の見方ができます。八百屋お七は愛しい男に会うためわずか15歳の歳ながら放火の大罪を犯します。いまだに上演され続けているのは、いちずな女心に皆が感動するため。
 そうおもえば列車の化粧なんて可愛いものです。
「やりなさい、やりなさい」
「ただ、マニキュアの除光液だけはかんべんしてね。卒倒する人がでてくるから」

 

2 件のコメント:

ワンピースファン ルフィと仲間たち さんのコメント...

毎日、徳島市内に来られているのですか。

てるゆき さんのコメント...

若いというのは良いですね。羨ましい。