2010年12月18日土曜日

湖への旅

 先日、新聞に絶滅したと思われていた魚、国鱒が山梨県の西湖で発見されたとのニュースが載っていた。もともと秋田の田沢湖にいた固有種であったのが昭和15年、温泉水が流れ込んでいた強酸性の川の水を水力発電の涵養水とするので田沢湖に流したため、酸性度が上がり魚が住めなくなり絶滅した。
 地元では幻の魚として発見者に懸賞金までかけて探していたそうだから、遠くはなれた富士山麓の発見とはいえめでたいことである。
 この田沢湖、みなさん旅行されたことありますか。もうすこし北に位置し、少し大きい十和田湖がどちらかというと有名ですからこちらの方に行った人が多いかもしれませんね。この辺りは薬効の素晴らしい温泉が多く、湯治も兼ねた旅行もできます。
 その田沢湖、見られた人はわかると思いますが、非常に魅力的な湖の色をしています。水彩画で緑の森と青空を描いた絵筆やパレットを洗った水の色とたとえたらいいんでしょうか、とても天然の湖とは思えない色です。エメラルドグリーンとコバルトブルーを混ぜた色。それも天気や太陽光の状態によって微妙に変化します。
 この人工的ともいえる湖の色、温泉の成分が流れ込んでいるためなのです。酸性度が高く、ちょっと前までは魚が住めない死の湖だったのです。でも前述のようにもっと昔、昭和15年以前は温泉成分が流れ込んではおらず、魚がたくさんいたのです。その後政策的に温泉水を流し込み魚は死に絶えたのです。そうして死の湖になったことに対するほんのちょっとした申し訳でしょうか、かわりに美しい湖の色になったのです。グリーンやコバルト色の湖面が銀の粒をまいたようにきらきらしているのを背景に畔に立つ高村光太郎作の黄金の辰子姫像は美しいものです。

 田沢湖は魚が住めない温泉成分でえもいわれぬ美しい色を持った湖になったわけですが、湖は分類すると魚や水生生物が多く住むことができる富栄養湖と魚や生物がすむことが難しい貧栄養湖があります。我々が見て「美しいなあ。」「ロマンチックだなあ。」と感じるのは貧栄養湖の方である。
 皮肉なことに生物が住みにくい湖のほうが、田沢湖のように湖水の色が美しかったり、透明度が高かったり、また静寂だったりして神秘的で深い情感をたたえています。
 寒いところにある、そして深い湖ほど貧栄養湖になります。だから寒い山の中の湖や東北、北海道の湖は美しくて人気のある湖が多いわけです。ちなみに田沢湖は日本で一番深い湖です。
 今の若い人たちの旅の好みは知りませんが、私が青春時代、このような湖に旅行することは憧れでした。歌に「湖がなんたらかたら・・・」というフレーズをいれるとそれだけでロマンを醸し出しました。だから流行った歌に湖を詠みこんだものがたくさんありました。
 
 昨日、図書館でビデオ「男はつらいよ」を借りてきました。フーテンの寅さんです。47作目。昭和44年から平成7年まで48作作られ、日本津々浦々旅をしてます。私は全作をすでに見てますが、思うような旅ができぬようになった今、時々旅情を味わいたくなったら、再度見ています。今回は、湖北の旅を自分が行った時の思い出と重ねながらビデオを鑑賞しました。
 琵琶湖は先の分類の範疇からいうと富栄養湖になります。魚も多いし、夏になれば最近は有害なプランクトンも発生します。しかし、これは琵琶湖の表の方。琵琶湖も北の方、すなわち湖北はちがった湖の姿を見せます。貧栄養湖に近くなり、透明な水色、山々に囲まれた静かな湖面、水深も南と比べグッと深くなります。夏でも物静かな湖水ですが冬は日本海側に近いため雪雲が覆い、うんと侘しき風情となります。
 この湖の最北に岬があり、昔は陸の孤島だったこの岬に抱かれるように小さな部落があります。小さなお社や寺を取り巻いて家々がありますが、中世の村を彷彿とさせるような村です。菅浦という村です。もう20年も昔、中世のたたずまいの残る陸の孤島というのを本で調べてここへ来たことがありました。
 ビデオでも私の行ったまさにその小集落で撮影が行われているのです。何度見ても素晴らしかった旅情をかきたてられます。

湖北の琵琶湖
菅浦の雪景色と湖
 

1 件のコメント:

ワンピースファン ルフィと仲間たち さんのコメント...

富士山の雪解け水は、何か大自然の力があるのでしょうね。
私は、山梨の富士山の国立公園内にある
ナチュラルミネラルウォーターを飲んでいます。
バナジウム水。

寅さんですが、何作目か忘れましたが
写真撮影で、ハイ「チーズ」 と言うところを
寅さんが口を空けて写っていて
後日談で、ハイ「バター」と間違ったらしいです。
要所要所の笑い と 感動は寅さんならではですよね。
それと、ヒロイン役の人とハッピーエンドにならない所。