2020年10月21日水曜日

野外彫刻展(つづき)

 あるでないで

 これは水の中に設けられた野外彫刻、デフォルメされた白い犬と丸木舟にのる写実的な茶色の犬二匹の彫刻である。この作者、去年も同じ題でやはり犬の立体塑像を展示していたと思う。ところでこの題の『あるでないで』は阿波弁を使う人でなければ分からないニュゥアンスがある。阿波弁話者以外だと普通、二重疑問「あるで?(それとも)ないで?」ととるだろう。だがここ阿波では違う。国語辞典的に意味を説明するよりそれを使う時のシュテュィェーションを説明する方が理解が早いと思う。

 息子を持つ阿波のお母さん、朝は何かと忙しい、家族の食事やらなにやらの用意でてんてこ舞い、そこへ高校生の息子、こいつがとてもドンくさいガキである。手のかかることこのうえない。弁当作ってやるが、もっていくのを忘れるくらいの大ボケ息子である。汽車の時間に遅れそうになるまで、寝てけつかるし、そのため朝食だの弁当だのでいつもバタバタしている。今日も遅れそうになり、パンをくわえながら片手に牛乳もち、同時に制服を着かえている(こんな芸当は不思議なことによくできる)。
 「かぁちゃん、ワイの弁当は?」
 作ってテーブルの上に置いているのに気づかない。うろうろ探し回っているようである。かぁちゃんイラっとして、
 「あんた、どこさがっしょんで、そこに、ほれ、あるでないで
 とこのように使う。
 ついでにもう一つ面白い阿波弁を紹介すると
 (先ほどの大ボケ息子のつづき)、かぁちゃん、食器を洗いながらチラと息子を見るとまだ弁当を探し当ててない、テーブルの上にあるのに気づいていない、息子は食器棚を開けて探し、しまいには収納棚の戸まで開けだした。かぁちゃんとうとうブチ切れて、収納棚にまで首を突っ込んだ息子に向かって大声で
 「このぉ~バカ息子ぉ!そんなところに弁当が あるかいだ!」
 
 『あるかいだ』も阿波弁話者でなければわからない言葉である。この作者も毎年『あるでないで』の阿波弁を使った主題を繰り返しているのでちょっと使い古された感がある。この『あるかいだ』は斬新である。次回はこの『あるかいだ』の主題でどうだろうと思うが、イスラム過激派の組織名と同じであるから剣呑かもしれない。

 昨日のブログで紹介した『七つの子を歌う森のなかまたち』 遠くから撮った写真でわかりにくいので再び近接・別角度の写真をあげておきます。この楽譜通り歌うと、ご存知の「♪~カラスなぜなくの カラスはやまに~」の歌となる。音符一つ一つに森の動物たちが描かれている。


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