2020年1月18日土曜日

密教のお寺やなぁ、いろんな仏さんばっかでなく神さんまでいてはるわ

 寺の公式な説明ではこの取星寺の御本尊は二体あって『虚空蔵菩薩・妙見菩薩』となっている。御二体の御尊格を解説した本によると虚空蔵菩薩さんは明星に化身することがあり、妙見菩薩さんの方も北斗七星の化身であるらしい。どちらもお空に煌めく星であるからこの寺の由来縁起の落星伝説ともつながっているし、また寺の名前が「取」ってきた「星」という意味に分解できるのもこれとかかわりがあるからだろう。

 日本では多くの仏さまと神さまは人間社会のように仲良く隣り合って共存している。いろいろな宗派の中でも真言密教は特に仏さま神さま方の相性が極めてよく、それらの諸仏諸神たちが曼荼羅図の中で秩序だった世界を形成しているのを見るとなるほどと理解できる。中心はもちろん大日如来さまであり中心に近いところに如来さま方、次に菩薩さま方となって同心円的な配置になっているが外周部には、神さま方、天部、龍神、月、太陽の神様、星の神様だっている。曼荼羅を見るともう無数といっていいほどの仏・神さまがいる(千は越えるやろなぁ)。その中を根気よく目当ての仏神を探してみよう。有名な如来方菩薩さま方は大きく描かれていることもあってすぐわかる。でも外周部にいらっしゃる小さな仏・神(天部)になると探しにくい。いくら探しても見つからないとあきらめるのはまだ早い。いくつもの名前を持つ方もいらっしゃり別名で潜んでいたりするからややこしい。実はそれワイのこっちゃ!といって別名でいらっしゃるのも多い。

 そんなことを踏まえたうえでこの密教寺「取星寺」の仏さま方神さま方を見てみよう。まず御本尊二体の一方の虚空蔵菩薩さまであるが、これは胎蔵曼荼羅を見るとかなり重要な仏さまであることがわかる。菩薩とはいいながら大日如来以外の如来さまより重要度が高いんじゃないかと思ってしまう位置を占めている。というのも単体で配置されているのではなく大曼荼羅の中でも「虚空蔵院」という区画、いわば小宇宙を形成したかなりなスペースに虚空蔵院の諸仏が配置されている中心にいるのが虚空蔵菩薩である。

 もう一方の妙見菩薩さまは菩薩位であるため、虚空蔵菩薩さまと同じ尊格でいらっしゃるが、虚空蔵さんほど有名ではない。もともとは妙見さんは日本や中国の神であったか、あるいは「天部」の諸天のように(日天、月天、梵天、地天など)古代インドから来た神であっただろうと思われる。寺の本尊の由来説明からそのように推測されうる。ずっと昔から(日本に仏教が伝来)菩薩位であった虚空蔵さんと違い、妙見さんの方はずっと後から「神」あるいは「天」を菩薩位に格上げしたのであろう。寺の由来説明記にはそういったことは書かれていないが、妙見菩薩の称号は虚空蔵菩薩と比べると新しいものであることは間違いない。明治の神仏分離令で神仏混淆が禁止され無理に引き離されたとき明神あるいは権現であった「みょうけん」本尊に菩薩位を送った可能性がある。そうすると150年ほど前である。

 取星寺に隣り合う形で、というより広大な取星寺の敷地内といってもいいだろう、神社がある。その神社の名前が「明見神社」(みょうけん)となっている。寺の方の本尊は「妙見菩薩」、神社は「明見神」、同じ読み方である、明治以前は大権現あるいは明神として一つだったものが明治の神仏分離令によって二つに分裂させられた結果であろう。
 下が明見神社

 阿弥陀堂もあり、阿弥陀様が祀られている。堂の前には観音さま像もある。どちらも密教の曼荼羅世界では重要な仏様である。

 その隣には七福神の「福禄寿」が祀られている神社がある。七福神の神様は中国の神様やインド由来の「天」部にルーツを持つのが多いが、福禄寿さまは中国道教からきている。

 近くには不動明王さま、不動明王は大日如来の教令輪身(衆生を強化するために便宜の仮のお姿)と言われている。

 そして大師堂

 大師堂前には、虚空蔵菩薩、弥勒菩薩、大日如来の三像が祀られている。曼荼羅では大日さんは中心であり他の二体も大きな位置を占めている。

 山頂付近には三宝荒神の神社もある。日本土着の神様であったようであるが、密教では仏の守護神、護法の神と位置付けられる。曼荼羅には直接見当たらないが外周部の神や天と同位の尊格ではなかろうか。

 以上紹介した以外にも小さな石仏、神像がいたるところにある。
 

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