2023年4月9日日曜日

花まつり

  『花まつり』といって最近の人が思い浮かべるのは、数日前に終わった「さくらまつり」そしてもう一週間びゃぁもすれば始まる「藤まつり」そしてそれがすんで5月中ごろからは「つつじ祭り」とつづく、それ以外にもチュリップまつり、バラまつり、などもありそうである。

 ところがそれらとは別に『花まつり』といって大昔から行われている(宗教色の強い)伝統行事があった。もちろんそれを私は覚えていたが、近年の、いわゆる時候の花を愛でるイヴェントの花まつり、カッコよく花フェスタじゃのフェスチバルといったりもする方が、あまりにも一般的になりすぎて、花まつりといえばそちらしか頭になかった。

 ところが昨日、久しぶりに遠くからやって来た妹と甥が札所めぐりをするというので案内がてら午後から付き添った。廻ったのは時間の制約もあり全部で9ヵ寺だったが、そこで

 「あぁ、本来の花まつりは、これだったんじゃ」

 とあらためて思い知らされた。まぁ百聞は一見に如かずでその寺本堂の拝殿をご覧ください。(9番さん法輪寺)


 これを見て瞬時に、今日の日付を思いだした。今日(新暦だが)4月8日はお釈迦様の誕生日である。写真をよく見てください、四柱のある天蓋のなかに、小さな金色の立像があります。仏教史を少しでも知っている人はわかると思いますが、これはお釈迦さまが生まれてすぐ、七歩トコトコ歩いて、右手で天空を指し左手で大地を指さし「天上天下唯我独尊」・てんじょうてんげゆいがどくそん、とのたまった姿をかたどったものです。言葉の大意は、天界も地上界も含めすべての世界で最も尊い唯一の者である、ということです。生まれてすぐ歩けるか?しゃべれるか?と疑問でしょうが、世界三大宗教の開祖ですからこのような奇跡的な伝説は当たり前でしょう。

 この日はどのような行事をするかというと、この生まれたてのお釈迦さまに香華をあげて供養すると同時にもっとも重大な行事は、この小さな立像に「甘茶」を注ぐことなのです。写真をよく見ると立像の前に大きなこげ茶色の水差しがありますね、その中に甘茶が入っているのです。そして小さな柄杓も中にあって、それで甘茶を掬い、お釈迦様の像の上から注ぐのです。我々もその作法どおり、甘茶を注いで手を合わせ祈りました。そのことからこの宗教行事を甘茶をぐ(そそぐ)ことから「灌仏会」(かんぶつえ)ともいいます。

 ワイの子ンまいときは田舎だったからか、この行事がまだ町内でも行われていた、小さなお堂に上図のような仏像を出し、灌仏会をおこなっていたのである。もっとも子供であった私はそんなことにあまり関心はなく、そのお堂に行けば、甘茶が貰えるのでカラのガラス瓶をもって、喜んでいきました。全般的に貧しく、甘いお菓子や甘い飲料に飢えていた時代ですからこんな「甘茶」でももらって嬉しかったんですね。しかし飲んだ感想はと言えば、大量に作って子どもなんどに配るものだから、お茶葉はともかく甘味はどうもサッカリン(人工甘味料)だったような気がします、みょうな甘さで後味の悪い甘みでした。本来は薬草である、甘みのある「アマチャズル」や「甘草」で作るのでしょうが、町内の子どもに配りまくるのですからそんな希少の薬草でする筈ありませんわな。

 昨夜、銭湯に行ったときに同年代のジイサンと今日が「花まつり」・灌仏会であることを話をして、そんな行事しっとるで?ときいたら行事はみんな知っているようだが、カラの瓶をもって甘茶を貰いに行ったことはないと言ってました。みんな徳島市内生まれのじいさんなので昭和30年頃の徳島市内ではもうそんな甘茶配りはなかったのだろうなぁ、と思いました。

 現代日本でこの「花まつり」灌仏会を知っている人が幾人いるだろうか。キリストはんの誕生日のクリスマスは知らん人おらんし、最近は日本のおいのこさんはほぼ絶滅したが、同じ種類の行事であるハロウィンは年々盛んになる。

 西洋化を目指した日本の文明開化もここに極まれりか

付録だよ

  「花祭り」ときいて同時に思い出した、若い頃きいた不思議な音楽の♪~タンタカタンタ、ズンチャカズンチャ、ポンポコペンポンポン~、のフレーズを。いま調べるとアンディス山脈の民謡をもとにした歌だった。でもこの曲、なんかお釈迦様のお誕生を祝う「花祭り」・灌仏会のBGMとして合いそうだと思うのは私だけだろうかなぁ。ヨウツベの曲から共有して下に貼っておきます。

1 件のコメント:

Teruyuki Arashi さんのコメント...

妹さん、甥さん帰省されたんですね。 久しぶりの再会ですか? 兄妹仲良く微笑ましいですね。