2022年3月26日土曜日

ヨーロッパと中央アジアの境とそこに住むある民族

  今、ウクライナでロシアの侵攻によってもたらされた戦闘が続いている。EU(ヨーロッパ諸国)はこぞってウクライナ支援を表明している。どうみてもロシア側に非がある。そのため当然日本もウクライナ支援、ロシア制裁を課している。確かにウクライナ支援の大義はあるが、これが中東の諸国、あるいはアジアの国の一つだったらどうだろう。ヨーロッパの自由主義諸国は同じように、故なく侵攻した国に対しウクライナに対してしているような強い非難をし、支援するだろうか。ウクライナほど真剣になるかは疑問である。ウクライナは地理的に近いこと以上に同じヨーロッパの一部という意識がかなりあるのではないかという気がする。

 レンガや石造りの洋風建築、石畳のある噴水や銅像がある広場、聖堂などウクライナの都市は欧州にある都市と同じ景観を有し、また人々も紅毛碧眼の典型的なヨーロッパ人である。テレビ、ネット、SNSなどの動画で人々や建物が攻撃され被害が発生しているのを見るとまるで自分たちの町や村が攻撃されているような一体感を感じるのではないだろうか。

 ここで「ヨーロッパ」とは?の地理的定義を考えてみたい。ご存知のようにヨーロッパはユーラシア大陸と地続きの西方にある。どこまでがヨーロッパでどこから中央アジアが始まるのだろう。大昔、私が中学生くらいのときに地理的なヨーロッパはウラル山脈~カスピ海北岸~黒海西岸~イスタンブルの線より西側だ、と習った記憶がある。

 しかし当時も政治的(共産主義体制)理由、あるいはこちらのほうがもっと理由としては大きいが、文化的理由として(宗教がロシア正教会であることから)、少なくとも当時のソビエト連邦は「ヨーロッパ」の範疇で区切らず、東欧とも違う「ソビエト連邦地域」と呼ぶのが妥当で東欧(東ヨーロッパ)ならばヨーロッパの東端として入るが、ウラル以西のソ連までヨーロッパに入るのは違和感があった。

 ヨーロッパで古くからロシアがどう見られていたかを示す言い伝えがある。

 「ロシアがヨーロッパかって?それは違う!かれらの皮を一皮むけばタタール(モンゴル・トルコ系騎馬遊牧民)が現れるんだ。」

 一見白人であるが、それは表面だけで本性はタタールだというのである。もちろん彼らはヨーロッパ人と思われていないことは言うまでもない。

 このようなヨーロッパの定義、範疇は1989年に激変する。ソ連の崩壊である。時ならずしてソ連領内にあったバルト三国や白ロシア(ベラルシ)、ウクライナはソ連から離れ独立国となった。結果、バルト三国はむしろ北欧の拡大、ベラルシやウクライナは東欧の拡大とみていいだろう。つまりヨーロッパの範囲がバルト三国、ベラルシ、ウクライナの国境東端まで拡大したとみることができる。地理的に言うとウクライナ国境東端を流れるドン川がヨーロッパの境であるといえるのではないだろうか。最初に言ったようにウクライナの戦火にヨーロッパ人がアジア・中東・アフリカでそれが起こった以上にシンパシーを感じるのは同じヨーロッパとしての同胞意識が心の奥底にあることは間違いない。

 確かにウクライナの東端であるドン川をヨーロッパとアジア(中央アジア)の境界であると認識するのは一理ある。というのも中央アジア史を勉強していて、この境界のすぐ西隣に住むある民族を知ってその思いを強くした。ウクライナ東端・ドン川はすぐ東のボルガ川と結びついているがその川がカスピ海に流れ込む流域付近はロシアの中の自治共和国・カルムイクがある。その民族の顔かたちはわれら日本人と見分けがつかないくらいよく似ている(つまりモンゴロイドである)そしてなによりアジアと感じさせるのはその宗教である。彼らは熱心なチベット仏教徒なのである。

 その地理的位置はほぼウクライナに東に近い。(赤線の範囲がカルムイク自治共和国である


 そしてそこに住む人々を撮った写真をみると日本人と変わらない顔が写っている。極東のわれらから見るとよくまぁこんな西の方までアジアの顔があるものだと驚く。だが騎馬遊牧民は歴史上このような大移動を短期間にやらかす。このカルムイク人もそうである。そもそもいた場所はモンゴル高原周辺である。




 ヨーロッパの地理的定義はいくつかあると先に述べたが、カスピ海以北・ウラル以西という広義の範囲でいうと、なんとカルムイク人はヨーロッパにいる唯一の仏教徒であるモンゴロイドとなる。やはりヨーロッパの地理的定義はウクライナまでというのが私の実感である。
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2 件のコメント:

Teruyuki Arashi さんのコメント...

ウクライナと、ロシアの戦争は、アメリカ いわゆる西側と 共産圏 ロシアや中国の代理戦争でしょうか?

yamasan さんのコメント...

 >>テルさんへ
 今日はたぶんバイトでしょうね、桜の季節、日曜、子供の春休みでそこは大賑わいでしょうね。ご苦労様です。今、枝垂れ桜が満開で、昨日石井の森本院、牛の島の向麻山へ花見に行ってきました。テルさんも平日が休みになるのだったら、花見でもいいし、春の野山の「遊山」でもいいし、気晴らしに出かけてはどうでしょう。いい気分転換になりますよ。

 話題の戦争、代理ではありませんね、何せ一方は親玉のロシアそのものが当事者ですから、見るところロシアが侵略した分悪いですね。だから多くの国が侵略されたウクライナを陰に日向に支持しています。ロシアは最終兵器つまり核をたくさん持っているので、力でねじ伏せるのは無理、いったいどのような決着がつくのか、不確定要素が強すぎてわかりませんが、ウクライナが領土と主権を保てるようになることがいいのですが。