2020年9月21日月曜日

太龍寺参拝 その2 各伽藍について

  鷲敷東でバスを降り、そこから西日本一の長さを誇る太龍寺ロープウエイに乗れば、境内まで直接通じている。朝7時前に家を出て汽車、それからバスを乗り継ぎそのバス停に着いたのは9時半を過ぎていた。そこから徒歩5分ほどにある道の駅・鷲の里がロープウエイ乗り場だ。行きも帰りもロープウエイにして楽に参拝しようか切符を買うときに迷った。しかし有名な山岳霊場である。下り道くらいは昔の遍路道も体験したく、また、上ってから気が変わり下りもロープウエイにするなら、太龍寺でも切符を変えるとのことで、片道切符にした。(これがあとでたいへんな結果をもたらすのだがそれはまた追々お話しします)

 ロープウエイの素晴らしい眺めは前々のブログ(太龍寺その1)を見てもらうとして、ロープウエイを降りれば、そこは本堂下の境内である。広い寺域で山の峯付近にあるため降りてみても本堂に続く石段とその上に本堂がチラと見えているだけで、寺の各伽藍は見えない。

 ロープウエイ降り口正面が本堂に続く石段、石段上にあるのが本堂

 

本堂の正面写真、ご本尊は虚空蔵菩薩さま


 虚空蔵菩薩さまへの祈願やそのご利益については薬師、観音、地蔵さんよりは一般の人の理解が薄い気がする。本堂横の説明版をよく読んでみる。


 その名前に由来するのであろう、「無限に広がる大空の蔵より・・云々」とある。それは際限のない空間にたとえ、そこには無尽蔵の豊かさのモノがある、と解釈できるのであろうか。この虚空蔵の意味解釈については、独断と偏見で私的に解釈したブログを以前作っていたのを思い出した(ここクリック

 真言宗について少しでも知ると虚空蔵菩薩さまは真言宗では重要な仏様であるとわかってくる。御大師様が行った修行に「虚空蔵菩薩求聞法」というのがある。そのご本尊は修法の名を見てわかるように虚空蔵菩薩様である。真言は

 『なうぼう、あきゃしゃ きゃらばや、おんありきゃまりぼり そわか』

 である。本堂前でこの真言をとなえ、参ったあと本堂の上方の丘にある多宝塔をお参りする。下が太龍寺多宝塔写真である。


 仏塔といえば一般的には中には仏舎利が納められ、それが礼拝・信仰の対象となるものである。多宝塔も仏塔の一種であるが、以前のブログ(鶴林寺その2)でも見たように、多宝塔は仏舎利を納めたものでなく、如来や菩薩(像)がまつられているものが多い。下は鶴林寺の多宝塔であるが正面の額にまつられている如来の名が掲げてある。五仏あるのは金剛界曼荼羅にもとづいている(成身会)。下は鶴林寺の多宝塔と額


 ここの(太龍寺)多宝塔も同じように五仏(菩薩)をおまつりしている。五つの虚空蔵菩薩像である。なんで同じ虚空蔵菩薩を五体も、と思われるが、同じではない。法界虚空蔵、金剛虚空蔵、宝光虚空蔵、蓮華虚空蔵、業用虚空蔵、の五体一組の虚空蔵菩薩である。まったくなじみのない仏さまたちであるが、鶴林寺の五仏と同じで金剛界曼荼羅成身会の構成である中央、東、南、西、北、の五方向にそれぞれの虚空蔵菩薩を当てはめていると思われる。これは五大虚空蔵といわれるが、曼荼羅の解釈にもとづいていることは間違いないであろう。

 多宝塔にお参りしたあと石段を下りて左に曲がると石橋があり、奥には大師堂がある。下の写真で左上に見えているのが多宝塔、石橋の奥、こんもりした木立に囲まれて少し見えているのが大師堂である。

 この大師堂は他の札所の大師堂とはちょっと違っている。正面から見たらどの札所にもあるような様式の大師堂であるが、太龍寺の大師堂を特徴づけるのは、その裏にある「大師御廟」である。裏にあるので正面からは全く見えない、知らずに大師堂をお参りして裏にある御廟の方まで回らない人は結構多い。大師堂の回廊を左にとり裏に回ると御廟がある。

 御廟から紐が延びてきて回廊にある礼拝所の金剛杵に結び付けてあり、参拝する人は金剛杵に触れると御廟の大師まで絆でそのこころが通じるようになっている。高野山では大師は亡くなったのではなく御廟の中で今日までずっと瞑想に入っていらっしゃるのだという言い伝えがある。ここ太龍寺でも高野山と同じように御廟をつくり高野山に模しているのである。この太龍寺が「西の高野」といわれるのは、深山巨木に囲まれた環境が似ているためばかりではない、このように高野山に模した「御廟」があることにもよるのである。

 そこから本坊の方に向かい、石段を下りる途中に鐘楼門がある。下がった紐を引けば鐘が鳴る仕組みである。静かで広い山内に鳴り響く鐘の音は、こころに共鳴し煩悩が洗い落とされたようなすがすがしい気分にさせる。

 鐘楼門をくぐると本坊である。本坊の端が納経所であるが、ここで有名なのは「龍天井」である。下は本坊

 本坊(持仏堂)の天井に描かれた龍の絵

 京都天龍寺も龍の名の入った寺で天井に龍の絵があることで有名だが、この太龍寺もそれと同じで寺名にちなんでか龍の天井絵がある。

 本坊横には護摩堂があり、不動明王を前に護摩が焚かれ加持祈祷が行われる。

 ロープウエイ出口から参拝したため最後になったが本坊を下っていくと最後に仁王門がある(鶴林寺から遍路道を歩いてくる場合はここが正面入り口である)

 この門には鎌倉時代の運慶・快慶様式の金剛力士像が鎮座していて寺を守っている。阿吽二体いらっしゃるがこれは「吽形」の金剛力士像である。

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