2025年8月30日土曜日

「高」のつく地名について

  名西郡石井町には「高」がつく地名が多い。大字でいうと高原、高川原、高畑・・などである。なぜ?と考えてすぐに思いつくのはその土地が高地ではなかろうかということである。しかし実際に上記の地区を歩いても平地が広がり、そこが高いところであるという印象は受けない。

 石井町はその大部分が吉野川の沖積平野である。平野の名の通り高地や丘などはない。では「高」という地名は別の理由だろうか。しかし調べるとやはり高地にちなんでいる。だが高地とはいっても「微高地」である。周りの地域より数メートルだけ高い台地状の土地である。石井町高原にある神社に樹齢800年をこえる樟があるがその説明版に「・・微高地に位置しており云々」とある。


 明治以降、吉野川の堤防が築かれ、中小の河川の護岸工事も進み、洪水の被害は今はないが、明治以前は度々洪水に襲われ低地は水に浸された。しかし一面の水浸しではなく、微高地にある台地上の土地は島のように点在していた。いまでこそ石井町は平たんな土地であるように思うが、洪水などで水が全面に押し寄せると、数メートル高い微高地は沈むのではなく水面上に出るのである。洪水によってその微高地の台地ははっきりとわかるのである。その微高地の台地が高原、高川原、高畑になっているのである。

 石井町には地名以外にも「高」のつくものがある。「高地蔵」である。この「高」は地蔵の丈が高いことを表す。洪水の浸水にも沈まぬようにという説が有力だが、下の東高原にある慶応元年作(1865年)高地蔵はかなり高い、いや高すぎる。もし台座まで水が来るとすると、家屋敷、人馬もろとも押し流されるノアの洪水くらいの大災厄である。むしろこれは信仰の対象としての地蔵にたいする願い、つまり洪水が低地にとどまるようにとの思いが、「低」とは反対の、その名に「高」を冠する高地蔵を作ったのではないだろうか。


 

0 件のコメント: