安珍清姫のお話といえば多くの人が知っているだろう。道成寺の鐘にまつわる話である。歌舞伎『娘道成寺』の豪華な舞台での娘女形の所作事(踊り)でも有名である。そもそもは仏教の説話に取り上げられているが、それ以前に民間のフォークロア(伝承)がもとであった可能性が高い。文章に残ったものとして一番古いのは仏教の説話文学である今昔物語巻14に入っている。
この説話を基に安珍清姫の物語が作られ、文楽や歌舞伎にも脚色され上演された。舞台の見どころは二つあると思う。一つは嫉妬に狂った女が思いをかける若い僧侶を追って日高川まで来るが、若い僧に頼まれていた渡し守が乗船を拒否する。そうすると女は蛇体となって日高川を渡るのである。もう一つは何とか道成寺まで逃げてきた若い僧は道成寺の鐘の中にかくまわれる。そうまで拒否され怒り狂った女(蛇身となっている)は鐘に巻き付き、火炎で蒸し殺すのである。
前者は文楽で『日高川入相花王』として上演され、後者は歌舞伎の所作事『娘道成寺』となっている。
道成寺縁起絵巻を見てみよう。
一夜の宿りで一方的に思いをかける女を持て余した若い僧侶は、熊野参詣の帰りに必ず寄って思いに答えようと、その場限りの約束をする。
当然、約束は果たされず若い僧は素通りしてしまう。それを知り嫉妬に狂った女は追いかける。追いかける女の身体は徐々に変身していく。
日高川の渡し守に乗船を拒否された女は蛇体となって川を渡る。この渡し守の顔が面白いので載せました。中世の絵巻(室町時代後半)だが現代のコミックに出てくるおっさんみたいだ。現代の漫画はこの時代からのDNAだということがわかる渡し守の顔である。
鐘に巻き付き火炎を吹く女の化身の大蛇、そして若い僧はあわれ・・・・・
今日、阿波銀ホールでその『日高川入相花王』の人形浄瑠璃があったので鑑賞してきました。下がその動画の一部です。
道成寺も日高川も見たことがないのでググルアースの鳥観図で見るとこのようになっている。北が上である。実は私は誤解していた。女の家はこの日高川より北方にあると思っていた、そうすると道成寺は川の南になるわけだが、実際は女の家は牟婁郡ということで川のずっと南方、道成寺は川を渡った北になる。やはり地図で確かめなわからないことがある。
そしてこの日高川であるが、このような妖怪変化にまつわる川は今見ると、え~~~っ、こんなに小さな川だったのかと驚くことが多いが、この日高川現代でも川幅は広く水量もたっぷりある。調べると二級河川だが日本では一番大きな二級河川だとのことである。
人形浄瑠璃『日高川入相花王』(ひだかがわいりあいざくら)※タイトルに7月21日と入ってますが22日の間違いです
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