病院と海

　今日は病院受診日だったため、ほぼ午前中それに時間を取られる。最近の医者は触診などほとんどしない代わりに医療機器を利用した検査、採血の検査はよくする。

　患者に触れもせず、患者の顔を見るのもそこそこにカルテががわりのパソコンに向かってパシャパシャやっている。
　触診による診断は廃れたかわりに、何千万か何億もするような最新の医療検査機器を使う。そして何かというと血を抜かれる。極めて高価な機械や試薬を使用するため、検査の保険点数は驚くほど高い。

　今日は薬をもらい血液検査の採血をしただけで4000円だ。貧しいやまさんの暮らしをギュウギュウ圧迫する金額である。
　昔から言われていることだが貧乏人は病気にもなれない。長い治療期間をかけずさっさと死ぬ方がいいようだ。

　半分冗談、半分本気だが、病院の多くある診療科の一つに

　『安楽死科』とか『ポックリクリニック』とかできないかなぁ～

　持病以外にも体調は最近よくないが、もう他の受診科にかかるのも面倒になって、なるようになればいいや、とやけくそ気味である。

　昼前に病院も終わり、列車に乗ったがぼんやりしてそのままグウグウと眠ってしまった。徳島駅についてもまだ眠いし、虚脱して力が入らない。そのまま、別のホームに停まっている列車に乗りこみまたグウグウ。阿南行だったため、小松島まで行く。

　「海を見よう。」

　駅を降りて港に向かって歩く。薄曇りで寒くはないが風が吹いて陰気である。それもそのはず、この港付近のさびれよう、荒廃ぶりはどうだ！

　岸壁を歩いても人とほとんどすれ違わない。進路の真ん中に猫が寝そべっていたが、私が近ずくとさささっと、離れ、数メートルのところで私をじっと睨みつけた。ガンを飛ばしているようだ。縄張りに侵入してきたエイリアンを見る目だ。

　過去、多くの旅人が行き交い賑わった岸壁も今は人っ子一人いない。

　終着駅にくっ付いたこの岸壁にはすぐ乗船できるよう阪神行きの船が停泊していた。
　待合室の喧騒、やたらと元気な竹輪売りのおばちゃんの売り声、乗船タラップを行列して乗る人のざわめき、どらの音、列車の出発ベルの音・・・

　しばし過去のまぼろしを見る。