時代劇、「武士の家計簿」
天保時代(1830~40年)から幕末にかけての実話をもとにしたある武士の一家の物語である。
私は面白かったが、こういう時代劇は好みもあるのでブログではあえて勧めません。
今日はあらすじや見どころを紹介するのではなく、今に残る、あるいは最近まで残っていた風習・民俗についてこの映画の場面をもとに取り上げます。
映画をもとに民俗や風習をとりあげるのには映画の時代考証がかなり正確でしっかりしたものでなければならないのは言うまでもありません。
かなり意地の悪い小姑のような目を持つやまさんは、映画の細かい小道具類、ちらっとしか見せないからわかりにくい什器類も見逃しません。
それでみても申し分ない映画でした。
ちょっと見てください
この煙草盆極めて史実に忠実です。四角い木の箱(盆)に白い陶器の器は火種を入れるところ、今吸い点けています。その手前の茶色の竹筒は、キセルをこの上でぽんと叩き灰を中に落とすものです。
ここまでなら普通の時代劇でも使うでしょうが、私が注目したのはその横の紙包みです。文字が書いてあるでしょう。これ「國分」と書いてあります。
知る人ぞ知る國分は江戸時代刻みタバコの名産地、当時、量り売りの紙包みを置くことでリアルさ100点!
さて、次は私が高校生頃まではまだ残っていた風習民俗についてです。次の2つの写真をご覧ください。
上の写真は臨月を迎える産婦に白砂糖を送るところ。下は出産後、産褥に臥す妊婦が白砂糖を舐めるところです。
こんな贈答の場面が出てくる時代劇って私は見たことなかったからびっくり。
もう、若い人たちの贈答に関する歴史の教科書にしてもよいような場面です。
江戸時代、白砂糖はオランダからもたらされるもので、超高価で、贈答品といっても将軍家、大名、大商人ぐらいが対象。しかし、中期以降になると、讃岐、阿波などでサトウキビから白砂糖が精製されるようになります、今に残る「三盆糖」ですね。それで、中小武士や町人にまで高価・貴重とは言いながら手が届くようになった。
だから、この時代、白砂糖をいただくことはたいへん貴重なすばらしい贈り物だったのです。
そして白砂糖は「薬」と同一視される滋養のあるものでした。ちなみに江戸時代、白砂糖はどこで売られていたか?なんと、薬問屋だったのです。
そのため、下の写真、妊婦(仲間由紀江)が薬・滋養として白砂糖を食しているところです。
どちらの風習も私が子供の頃まであったのです。贈答に白砂糖を送ることは高校生頃まで残っていました。
今だと、贈答に白砂糖など送ったら馬鹿にされかねませんが、いくら今の時代であっても、安いという理由でこんな伝統のある贈答品を馬鹿にする人がいたら、少なくともその人は歴史の見識のない人でしょうね。
お若い人、ぜひ知っておいてくださいね。
次の民俗・風習は形を変えて最近増々盛んになっています。次の写真をご覧ください。
えええ、何、これ?子供が飛んでる。遊び?にしては・・・子供も大人もえらいフォーマルな?
これを見て何をしてるか答えられれば、歴史検定で高得点間違いなし。
武士の子が5歳(数えだから満年齢は4歳)になったとき、今までの、そしてこれからの無事の成長を祝う、また通過儀礼としての「袴儀」(はかまぎ)なのです。
この子ども、後ろにある碁盤台から飛び降りてます。まず碁盤台に上がり、この日初めて袴を着するのです。後ろに控えている大人が烏帽子親となり、袴の紐を結びます。そして、正装が終わると飛び降りるのです。
ここまで説明すると現代に引き継がれた風習が思い浮かびますね。そうです。
「七五三」です。いまは格好だけこの写真のようにしてお宮参りで終わりますね。しかし、本来はこのようなものだったのです。
外にも歴史的遺物の見どころとしては「四文銭」、「碁」、「矢立」などなど、たくさんあります。動画で見る歴史博物館の趣のある映画です。興味のある方は鑑賞してみてください。
一般的な評価も悪い作品ではありません。
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