今日から6月、一年12か月のうちでもっとも湿っぽい季節となった。湿っぽさや気温の上昇とともに蒸し暑くなる6月を嫌う人は結構いる。
欧州では6月は、乾燥して晴天が続き、初夏らしい快適な気温になるそうである。昼が長いことと相まって、戸外の活動にもってこいの季節となる。ちょうど五月初旬のゴールデンウィーク頃の気候であろうか。
日本の6月は梅雨の季節である。じとじとしたうっとうしさ、ムシムシした暑さが特徴である。日本にいる欧州人はとりわけ梅雨が苦手な人が多いと聞いたことがある。日本の真夏よりも湿度の高い6月の気候の方が耐え難い不快さを感じるそうである。
しかし、われわれ日本人のご先祖様は縄文時代も含めると1万数千年にわたってこの梅雨の季節を過ごしてきたわけだから、その子孫である現代人も、そう嫌わなくてもいいような気がする。
最近は欧米人のように、折角の黒髪をオキシフルで漂白してチャガミにしたり、ブロンドにしたり、揚句、ブルーやグリンのカラーコンタクトにする人もいるそうだから、外見だけでなく気温・湿度に対する感性もアチャラの人に近づいている人が多いのだろうか。
嫌う人もいるこの月であるが、6月の多雨、気温・湿度の上昇は日本の国土に恵みをもたらします。水稲は特に高温とたっぷりの水を好みます。この6月の気候がなければ多くの収量を期待できず、昔からこれだけ多くの日本人を養うことはできなかったでしょう。米作りにとって6月の梅雨は欠かせないものなのです。
また、6月を中心とした温暖期の有り余る雨量は山に大森林を育み、豊かな植物相・動物相を展開させ、美しい自然を作った。多量の雨を集めて流れる川は複雑で美しい渓谷を刻んだ。
そう考えると6月はまことにありがたい恵みの月である。
その恵みの月の初日、田植えを見た。
その田は、町のど真ん中、スーパーなどの大型の店がひしめきあう中にあった。水いっぱいに張られた泥田の中には小学生がひざ上までジャージをたくし上げ、脛をだし、くるぶしまでつかっている。
その小学生が大勢一列に並んで昔ながらの田植えをしている。学校が所有する田圃のようで、教育活動の一環としてやっているのだろう。先生そばにいて監督している。
日本の国土の様子を言い表すのに万葉の昔から使われてきた修辞があります。
『豊葦原の瑞穂の国』(とよあしはらのみずほのくに)
我が国土にはたっぷりと水があり、湿地帯にはたくさんの葦が風になびき、また人の手の入る湿地帯では美しくそろった稲穂が実を垂れている。このような意味でしょうか。
このようにわが国は賛美されたのです。6月はどこへ行っても満々と水がたたえられた水田があります。豊かな湿地帯に対するこの美辞がぴったりします。
キャッキャッと喜びまわる子どもたちを見てある芸能が浮かんできました。それは『田楽』です。
田楽は中世のロケンロールといわれる(そんなん誰が言うんじゃ?少なくとも私が・・) 鎌倉時代、老若男女、上下貴賤別なく大ブレーク。田楽法師といわれるミュージシャンを中心に狂喜乱舞。みめかたちよき稚児に金襴衣装やそのほか奇抜な格好させ、田楽舞いに全員踊り狂いエクスタシー状態。私が中世のロケンロールと名付ける所以です。
その田楽はこの泥田での田植えから生まれた。神に願い(豊作など)をかける意味もあったのか、田植えをしつつ、笛・太鼓鳴り物で、歌い、身振り手振りよろしく作業したのが田楽の始まりです。
泥のなかで田植えする楽しそうな子どもをみて田楽を思い出したのですが、多産なイノシシの子のウリボウが押し合いへし合い泥ぬたの中で遊ぶ姿もまた同時に思い出しました。
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