病草子を今日は取り上げます。潔癖症の人、エロ、グロが嫌いな人はご遠慮ください。
平安末期から鎌倉時代初期成立といわれる病草紙(絵巻物の一種)にはいくつかの病気がとりあげられている。900年も昔の国宝の絵巻物といえば、なにか上品で、絵は美しく、文章も人を魅了するようなものと思はれるが、そんなものばかりではない。「病」、これは人の「業」であり、「死」とともに避けては通れないものである。そしてひどい苦痛、醜さが伴う。しかし当人にとってはそうであっても、見る人には笑いのタネかもしれない。
「なんと、人非人な!」
というなかれ、諧謔(ユーモア)がなくなればこの絵巻物の価値はない。
よくぞ、こんな題材で絵巻物を作ってくれたものと感謝しなければならない。「病」の姿は赤裸々なものであり、それだけに当時を生きた人の生々しい息づかいを感じる。
まず最初は、現代人にも多い、上品な病 「不眠症の女」
次はおそらく今の「痔瘻」であろうと思われる 『尻のあながたくさんある男」
排泄する時、穴ごとに出て、わずらわしい、とある。
横で熱心に見る女が印象深い。
そして次は 「ふたなりの男」 ごくまれに男と女の両方の染色体をもつ真正の「両性具有者」がいる。陰茎と陰唇、男女の両性器を持つのである。
本人は寝ているところへ、
「おいおい、こっち来て、見てみろや」
と、いたずらな男が着物をめくり、次の間の男を手招きしている。
この何とも言えない笑顔が印象深い。
ヨーロッパ中世なら、有無を言わさず、「悪魔」として火あぶりになったかもしれない「両性具有」、しかし、日本やギリシャではそんな野暮、いや無残なことはしません。
プラトンはおもっしょい説をとなえています。
大昔、男と女は分離してなくて、一体化していた。よく形はわからないが、どうも球形に近いもので、ゴロゴロ転がっていたみたいだ。変ないきものだねえ。
なんか不都合を感じたものか、神の王、ゼウスが、パカッと二つに分けた。そして一方が男、片割れが女になった。
だから、それ以来男と女はお互い引き合うんだとさ。
で、「両性具有者」は、分離がされてない原初の姿、別に化け物でもなんでもなく、むしろ神話時代の超能力を有すると考えられる卓越した存在に見られていた。
ちなみに「両性具有者」は英語でandrogynousというんだけれど、当然これギリシャ語、andro-は英語のmanと同じで人とか男を表し、gyno-は女性を表す。
日本でも最近は両性具有者をアンドロギュノスというように(まるで恐竜のような名前じゃ)呼んだりする。
日本ではこの絵巻のように「病気」の一種として扱われている。
他にもいろいろな病がありますが、興味のある方は、大きな図書館にはこの「病草紙」の絵巻物シリーズがありますから、そちらで見てください。
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