非欧米諸国の中で近代国家を植民地にならずに自ら作った日本はすごい。ヨーロッパの近代諸国は、王・貴族から市民階級へと権力が移って行ったといわれている。英仏などはその過程で流血革命を経ている。日本の特異なのは近代化を進めたのが同じ支配階級だった武士であることである。
結果的に支配階級である武士の特権を廃止するようになる革命といってもいいような維新を成し遂げたことは、おおいに評価していいだろう。「痛みをともなう改革」などと今の政府もいってるが、自分の特権や利益を捨てる改革は容易ではない。どこを見ても自らがそんなことをして国の体制を変えたものはいない。
そんな稀有なことをやり遂げたのがこの時代のわかい武士たちである。
ま、そんなわけで若いエネルギーがたぎる「坂本竜馬」をみてるんです。今日は大政奉還を説得するところだったんだけど、なかなか面白かった。ドラマだから多少は誇張があるだろうが、今日の大殿さま容堂公、かっこよかったね。若い志士からみたらほとんどおじいちゃん。保守的にならざるを得ないが、でも最後は自分で決断する。説得されたにしろ、最後は自分の決定だからね。大政奉還の建白書を慶喜に奉るのも、史実。
今まで、酒ばかり飲んでて、酔眼で家臣をかなり斜に見ていた、ちょっと妖怪じみた印象だったが今日の決断見直しましたわ。
ところで彼ら志士たちは外国の先進的な科学技術や制度に非常な危機意識を持っていて、自分たちもこれらを学び克服しなければと思っているんだけれど、道徳・倫理は決して外国に負けていると思ってない。すごくその点だけはプライドを持ってる。
NHKにはそこのところを強調してほしかったけれども、残念ながらそうなっていない。竜馬もなんか無国籍でひたすら人類愛とでもいうような、ほんわかした希望のようなもの。世界市民の一員のようなこの世紀ではありえんようなことを言う。違う、違う。
武士としての道徳・倫理がしっかりあったればこそ稀有の改革の信念、エネルギーが生まれたのである。
維新の英傑となったような人は竜馬も含めてみんな漢籍で道徳・倫理を徹底して習った。武士の徳目は血肉となっているのである。その基礎の上に蘭学。英学があるのである。けっして逆ではない。和魂洋才はスローガンだけではない。
よく武士の徳目は八つあるといわれている。仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌である。日本で一番重んじられたのは「忠」である。中国も韓国も最上と考えられていた徳は「孝」である。日本だけ違う。この二国では不孝はもっとも忌むべきものであって、国家の大事(たとえば戦争従事中でも)であっても親が死ねば一定期間喪に服さないことは許されない。職務に忠実のあまり親の死に目に会えないことは日本ではゆるされることもあるが、この二国ではぜったい許されない。
この日本の武士の「忠」が、唯一非欧米諸国のなかで近代化が成功した原因の一つではないだろうか。
「忠」という概念は鎌倉時代から「滅私奉公」という概念を含んでいる。竜馬たち志士は、最初は藩主に忠をささげる。しかし、「忠」は、藩をも「私」とし、もっと外部のおおきい範囲へと「公」を広げていく、とくに外国の脅威のもと、やがて公は日本国全体へと広がる。「孝」は家、一族からは広がらない。「忠」を最高徳目とした日本が近代化に成功するのである。
志士たちの多くは途中で非業の最期をとげるが、維新は成し遂げられる。彼らは「滅私奉公」し、まだ見ぬ国家に「忠」だったのである。
明治以降、昭和まで日本人のもっとも好きな芝居は武士の時代から続く「忠臣蔵」でありつづけた。
2 件のコメント:
いにしえの侍の心!
忠義心の元 国際的な新しい国造りの仕組みを変えたのは、
私利私欲だけでなく、自分を犠牲にしてまでもやり遂げたいという武士としての心意気ですよね。
今の若い世代に、歴史認識のしっかりとした現代の坂本龍馬が出てくれることを願いたいけど・・・・。
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