2011年10月30日日曜日

病草子を読む その2

 今日は朝から雨で外をウロウロできない。家に引きこもっている。
 あまり一つ所にいると危ない気がする。
 強迫観念だろうか、皆さん聞いたらお笑いになるかもしれませんが、一か所に長くいると死神に見つかり、襟首を掴まれたり、地獄からの獄卒のお迎えにあいそうな気がして落ち着かない。

 そうはいっても雨の中、長時間傘をさして歩くのはしんどい。また今日は朝から眠くて頭がぼんやりしていて、雨の中、外へ飛び出す気力もない。車さえあれば近くの温泉場にいってのんびり湯につかり、瞑想にでもふけるのだが、車はブチ壊れたまま庭の片隅で鉄くずとなっている。

 「ああ、天気も、気分も鬱鬱じゃ!」

 こんな時は家の中にいて、気分が明るくなるような本やビデオを見ればいいような気もするが、そういうのはやめて、また「絵巻物シリーズ」を引っ張り出してきて読み始めた。前にブログで一度取り上げた『病草子』である。
 読みながら同時並行にそのテーマでブログを作った。写真に撮ったりパソコンに打ち込んだりの作業なので結構面白い。

 この絵巻物、「病」(やまい)という深刻なテーマを扱っている。そのため、現在病気の人や同病の人を傷つけたり、また病気でない人でも見る人をいささか気色悪がらせるかもしれないが、全篇を通して

 「人の世とはこんなもんですよ。きれいごとばかりでは人の世はすまないんですよ。」

 と人が病を得ても生きなければならないことの赤裸々な真実を見せてくれるものでもある。そりゃそうだ、多くの人は、病気にかかり、病を得て死ぬのであり、健康なまま死ぬことはまれである(ってこの言葉は逆説で、あり得ぬことじゃ)

 それではその中から選んだ一部を見ていきましょう。最初はこれ
 なんの病気かって?この時代には極めて珍しい贅沢病、「肥満」、肥満よりそれがもたらす成人病が怖い。
 女高利貸しというから、人の生き血を吸ってこうなったと、周りのモノは悪口を言ってるかもしれない。そう思い見ると侍女もなんだか小馬鹿にしているような・・・

 次は最近には珍しい、まあ、いわば性病の一種ともいえないこともない(性交渉によって相手の陰毛に巣食う虱が自分の陰毛にうつるからエイズのような性病の一種と見る向きもある)、陰毛虱(虱は蚤と違い体の部位によってそれぞれ種類が違うそうです。)です。
 うつると痒くてたまらない。それでよく見ると、陰毛、あるいは体のそのほかにも小さな虫がウジャウジャ!
 そこで迷わず陰毛を剃ることにしました。これは今でも正しい処置方法です。
 それにしてもこの横のおんなのうれしそうな顔!


 お次は遺伝性のものと思われる「白子症」、詳しくは私が以前にブログに書いてますのでこちらをどうぞ
http://koromonotate.blogspot.com/p/blog-page_03.html
中世においてはこのように白くなる病気(遺伝的発症で病気というには抵抗があるが・・)は外見が他人と違ってみえるため、差別の対象となった。そういえば昔から差別を受けたレプラ(らい病)も症状は皮膚が白蝋のように白く透き通るようになる。
 この女も差別を受けているのであろうか、周りのものは指さし、驚いたり笑ったり、露骨な表情で接している。そのためかもしれない。この女は定住者ではなく、旅の遊芸人である。鼓を持っている。この時代「白子」はこのように生きる以外なかったのであろうか。
 大昔、身体異常者に生まれたら、遊芸人、あるいは見世物とされたと聞くが、この絵巻を見てそのことをちょっと思った。中世とはいえ残酷である。

 次の病はこの絵巻の中でもかなり深刻である。ひどい水様の下痢、嘔吐は細菌性の伝染病の可能性がある。赤痢だと命取りになる。
 介抱する尼の格好をした老女の表情を見て欲しい、このような病気の介抱に慣れているのか、こともなげに淡々と手当を(頭をおさえ、片手は背をさすっている)しているのが印象深い。他の若い女にてきぱきと指示を与えているのであろう。頼もしいが、さてこの女、助かるのだろうか、私の見るとこ半々か。

次は詞書を読むと命にはかかわらなかったがとんでもないにあった男の話である。
目を病む男がいた。そこへ流しの医者と云おうか、門づけの医者とでもいおうか、ギターを抱いた渡り鳥、ならぬ医療用具を抱いた渡り鳥の医者があらわれ、

 「旦那さんこんにちわ、医者いりまへんか?」

 さっそく見てもらったら

 「ああ、ちょっとした手術でなおりますわ!」

 といったんでしょうね。それでこの絵巻のようになりました。
 結果は、ますます見えなくなり、片眼は潰れて全く見えなくなったそうです。
 皆さんもくれぐれも流しの医者を家に呼び入れないようしましょう。って!いまどきそんな医者はおらん!

 最後は幻覚が見える病気。かなり深刻である。大勢の小人のような僧侶にかこまれ、棒で襲われる幻覚に悩まされている。
 深刻だけど何かユーモラスである。この大勢の「一寸法師」の漫画のような描き方が面白い。下の写真はそれを拡大したもの。
 ビワがあるところを見るといまの月でいうと6月だろう。うっとしい梅雨空で精神疾患の症状が出たのかもしれない。

5 件のコメント:

Unknown さんのコメント...

 最後の写真の小人は、私も以前夢の中であったような気がします。2~3匹で棒は持っていませんでしたが、私の手足を噛んで去っていきました。いたずら者の妖精だったような気もします。(@_@)?

yamasan さんのコメント...

 >>しんさまへ

 よく似た体験があるものですね。私は子供の頃、発熱した時、小さな生き物がワサワサと大勢で私の寝ている周りを動き回るのを確かに見ました。

てるゆき さんのコメント...

病気にならず、ぽっくり死にたいなあ!

yamasan さんのコメント...

>>てるさんへ

 またまたそいうことをいう
 ぽっくりいけたらいいけど、死に病で長く苦しむこともあるよ。
 そんなこと考えずに前向きに生きましょう。

Unknown さんのコメント...

そういえば私も若いころ、発熱した時に小さな生き物がわさわさと私の周りを動き回っていました。みんな同じものを見るんですね。感激しました。(^o^)/