彼は私のことを買い被っているところがあり、
「やまさん、これを見て、意見を聞かせて。」
と、まるで鑑定師に対するようなことを言われる。そういわれても一般的なことしか言えないが、まあ知っていることはいっているし、気安い仲なので怪しげなものに対しては結構ずけずけ疑問を言っている。
今日は甲冑姿の武者絵(江戸時代)を見せてくれた。まあ、時代とか作者、書かれた武将(鳥居の紋章の旗指物を背負っている)の名前について思い当ることはないかというものであった。
そんなことを言われても鑑定師でもないし、全くわからないが色が美しい絵なので鑑賞させてもらうつもりで見ていた。
それを見ながらKちゃんはさかんに「萌葱の甲冑」と繰り返し言っている。「萌葱」とは色の種類であるが、その美しい甲冑の色はどう見ても「萌葱」ではない。
Kちゃんの持ってきた武者絵とは違うがこんな色の甲冑であった。
「Kちゃん!この色、萌葱じゃないよ、縹だよ」
知らないのも無理はない今、「縹」色(はなだいろ)といってどんな色かわかる人は100人いて一人もいるだろうか?
また、萌葱(もえぎ)といってわかる若い衆(Kちゃんは若い)が10人に一人いるだろうか。
私は「平安時代の色」という本をたまたま読んでいたため知っていたがそれまではもちろん知らなかった。
ちょっとその色を下に貼り付けておきます。
本から写真に撮ったので正確には再現されてませんがどういう系統の色かはわかるでしょう。
「縹」は今でいうと明るい青、「萌葱」はみどり系統、この「萌葱」とよく間違えるのが「浅葱」(あさぎ)これは水色に近いので萌葱とは全然違う。
ところで甲冑は「縅」(おどし)という技法で作られる。縅(おどし)とは、小札板を革や糸などの緒で上下に結び合わせること。
この縅の糸に目立つ派手な色を使えば甲冑も美しい目立つ色になる。上記の兜の色でもわかるように赤系統や青系統の色糸は目立つものであり、武将に人気があったと思われる。
「緋縅」(赤系)「縹縅」(青系)がそれである。
ここまで書いて、あることに気が付いた。
重要な色の漢字は「糸偏」が多いのである。
「縹」(青系)、「緑」、「緋」(赤系)、「紅」、「紺」、それから「紫」も下に糸を含む。
「なぜか?」
普通、昔の染料は草木染めだから「くさかんむり」ならわかるが・・・・しかし、考えれば当時の「色」を発色させる主体は「糸」である。「糸」を離れて草木染めの「色」はない。
草木染をする人なら知っていることだが、草木染の煎じ液というか抽出液は、最終発色の色とは似ても似つかない色をしている。それに糸を浸けさらに草木灰と交互に何度も繰り返し浸けてようやく最終的な色に発色させるのである。
だから、発色主体の糸を離れて「色」は考えられないことになる。このため「色」の漢字に「糸偏」が多いのではないかと考えたのである。
最後に9月30日のブログでアップした「ツユクサ」の写真を再度貼り付けておきます。
微妙な青系統の(決して現代の青ではない)「縹」色に近いのはツユクサの色だそうです。ツユクサと縹色、あるイメージが形成されそうですね。
2 件のコメント:
色の名前を花や染料の名前から付けると、覚えやすいし、味わいがあっていいですね。マンセル記号じゃ味もそっ気もないですから、この機会に覚えようとおもいました。(((^^;)
中間色のしっとりした色を弁別できる能力が日本人は高かったと思うんです。
上記の微妙な色合いの違いで「文学的」ともいえる様々な色を命名してますものね。
でも最近は「蛍光染料」でドギツイ色があふれてます。自然な反射以上に彩度の高いのがこの「蛍光染料」です。
微妙な感性がぶち壊されていますね。
このツユクサの花の色が近い「縹」、透明感ある青で美しく、冷静でさわやかな感じがします。
しんさまにイメージカラーとしてピッタリと思い、進呈いたしたいと思います。
「え?よけいなお世話じゃ」って?
「そうでした。失礼しました。」(^_^;)
コメントを投稿