2011年9月30日金曜日

歩きながら四字熟語について考えた

 早朝曇っていたがしばらくすると晴れてきたので、久しぶりに蔵本で降りて田宮川沿いを歩いた。盛夏の間は、じりじりと気温が上がり始める朝に、夏でかなり高くなった朝日を正面から浴びるのは、正直嫌なのでずっと散策は遠慮していた。

 通学時間帯だったのでKG高校の生徒と第一踏切まで並んで歩いた。この高校は男子が多いようで女子はほとんど見ない。我が町を含め県西部から通学するこのKG高校の生徒は列車の中でもお行儀よく真面目な感じの生徒が多いが、本を開けて勉強しているのはあまり見たことがない。
 でも今日は私の隣に座った男子生徒は国語だろうか、本の間に挟んだ漢字がたくさん書かれてあるプリントを一生懸命勉強していた。

 第一踏切でこの生徒たちとわかれて川沿いに歩き出したが、さっき見た生徒・学生たちの漢字の勉強について考えてみた。教育問題って小難しいように見えて結構歩きながら考えられるんだよね。それだけ身近なのかなあ。

 ある大学の先生が書いた本に、最近は大学生でも漢字を知らなくて困るとあった。誤字脱字は当たり前、四字熟語になればもう何をかいわんや、ちんぷんかんぷんの状態だそうである。

 「ほんまかいなぁ」

 と思うのだが次の話などを聞くと真実なのだろうと思う。

 『空前絶後の意味を問うたそうである。すると、「午前中空腹で午後から気絶すること」とあったそうである。なにか切迫感のある意味と思っていたのだろうか』

 『また、虫食い問題で「〇肉〇食」を問うたそうである。先生は当然「弱肉強食」と答えてくれると思っていたら、「焼肉定食」という答えがたくさんあったそうである。」

 しかし、若者を笑えない。四字熟語の難しさ、そして知らなさ、は私も同じである。「空前絶後」「弱肉強食」は知っていたが、知らない四字熟語も多い。若者と五十歩百歩であろう。
 というのもつい数日前の新聞に琴奨菊の大関昇進の誓いの言葉が載っていた。その中で彼は「万理一空」という熟語を使っていたのであるが、読んでもなんのことやらさっぱりわからなかった。

 解説があり、それを読んで、納得しようとしたがどうにも納得できない。出典は宮本武蔵の「五輪の書」であり、その中の
 
  『万理一空の所、書きあらわしがたく候へば、おのずから御工夫なさるべきものなり』

 からきているとあった。
 これを読んだときこの意味を一義的に知ることはあきらめた。結局、武蔵はこういっているのである。

 「万理一空、を解説したいのだが言葉で書くことは難しいので、みんながそれぞれに考えて理解し、実践してくださいね。」

 原典がこれであるから、後世の我らは推測で知るしかない。人によってあれこれと違い、あいまいになるのはやむを得ない。
 このような熟語を大関昇進の時の誓いの言葉に使ったことに対する私の感想は

 「よくまあ、こんな、わかりにくい、難しい四字熟語を使ったもんだ。あきれた。」

 が印象である。

 使った当の本人が

 『いろいろな意味に取れるが、自分としては目指す先は一つであり、目標を見失わずに努力すること(の大切さ)を考えた。稽古の先に光がある。メンタルを強くし、努力と心が交わったところに大関があったとの意味です』

 といっている。万理一空とした必然性は何もない。あえて超難しい「四字熟語」を持ってきて、世の話題をさらうという意図があったのではないかと勘繰ってしまう。東大の試験官が出すならわかる気もするがお相撲さんがこんな超難解な四字熟語を使うのはどうかと思う。
 いつも地位昇進の折にお相撲さんは四字熟語を使うが、今回のこれは「やりすぎ」である。

 いくつかの新聞を読み比べて見ても各新聞の解説も推測の域を出ない。なかには「万里一空」としたものもあり、意味もばらばら。

 その中の一つに
 「どんなに遥か遠くまでいっても、空は一つしかない。つまり全てのものは一つの世界に留まっている事。」

 そして別の解説では
 「万(よろず)の理は空に帰すると言うことにより、具体的な術理の奥にさらなる深みがあること」

 この相違は大きすぎるぞ!上記の第一の「空」はsky、青空の「空」である。次の「空」は仏教思想の色即是空の「空」に近い意味となる。

 「そら(空)おかしいわ!」

 それも武蔵さんが「各人、ご随意に解釈し実践してください」といっているのであるから仕方ない。ただ私の予想としては、『万理一空』の「理」は朱子学でいう「理」。「空」は仏教思想の「空」に近いと思う。
 なぜそう思うか、じゃあ、説明してみろと言われれば困る。

 などと考えながら歩いていると佐古駅に近い田宮川鉄橋が見えてきた。もうこの辺で歩きながら考えるのはやめることにした。

しばらく歩かなかったが遊歩道が隠れるくらい雑草が生い茂っている。



可憐な花、ツユクサが咲いていた。
 
 
 
 
 
 

近くには木槿の花も咲いていた。

2 件のコメント:

Unknown さんのコメント...

 私もそこはよく通りますが、結構いい散歩コースですよね。あまり人もいないし。最後の木槿の写真はなぜか合成に見えるのですが、そんなことないですよね。失礼しました(^_^.)

yamasan さんのコメント...

 この時、携帯しかもっていなかったのですが、携帯も「接写」があると教えられ、初めて携帯の「接写」で撮ったのがこの木槿の写真です。