2022年10月31日月曜日

坑にす

 今日で10月も終わりだ、今年の一年もう後二ヶ月しかない。時の流れの早いのを感じる。そして今日は10月31日、ハロウィンの当日だ。年々ハロウィンは盛んになっていく、日本人はキリスト教徒でもないのに、クリスマスと一緒で本来の宗教行事色が薄れ、今やはっきり言って怪奇仮装大会の様相を呈している。

 このハロウィンの馬鹿騒ぎはかなりまえから広がっていた。私のハロウィンのブログは過去幾つかあるが、最も古いのがこれである(ここクリック)。この過去のブログを探していて気がついた!12年前のこのブログが載っている10月は私がブログを始めた記念月であると、うぅ~ん、一年どころか干支の一巡の12年間もおもえばあっというまだったな。

  そのハロウィンのイブ・イブの日、韓国で悲惨な事故が起こってしまった。その報を聞いたときまず驚いたのはその人数の多さである。154人が雑踏が原因の「圧死」とある。一体どうしたらそんなに死ぬのか。直近の日本の圧死事故は明石花火大会後の雑踏が原因の圧死があるが死者は11人である。韓国の事故は多すぎる気がする。しかし後で映像を見ると、現場は坂になった細い路地である。ぎゅうぎゅうに詰められて混乱した群衆が、下り坂で体が傾き、倒れる力がより強く加わったのが分かる。まるで空気の入った注射器のシリンダーを押すように圧縮され圧死したのだろう。それで驚くほどの死者となったと思われる。

 下り坂で群衆の重さがより加重され被害を大きくした事故を探すと、日本では昭和31年元旦に新潟県彌彦神社で、3mの落差の境内のテラスとそれを結ぶ石段で、大混雑した参拝者が雪崩れてきて、下のテラスと石段下で124人も圧死する事故が起こっている。行き場のない大混雑と落差が大惨事をもたらしたことが分かる。

 客観的にあ~だこ~だ言うのは評論家やジャーナリストに任せるとして、おざなりの同情より、まず第一に自分として巻き込まれないようにどうしたらいいか自己対策を考える。しかしよく考えると、この歳が来て混雑などは努めて避けているので、私が群衆の中で圧死することなどはまずないだろう。

 圧死とはずいぶん苦しいものだと思う。子ンまいとき祖父か祖母に手を引かれギュウギュウの群衆に揉まれたことがある。どうゆう状況か思い出せないが、ともかく私より大きな大人の群衆に埋もれてしまい、人の服以外何も見えない。そのうちとても苦しくなり、「息ができん~~ん!」と泣き叫んだ。そのことがトラウマのようになって今も記憶に残っている。今になって考えると、本当に肉体が圧迫され肺が潰され呼吸困難になったのではなく、ギュウギュウの密集や人いきれで心的なパニックとなり呼吸困難になったものと思われる、だから私の手を引いていた大人はそう慌てることもなく私を抱き上げるかなにかして群衆から連れ出してくれた。

 このソウルの雑踏事故の死亡原因の「圧迫死」というのは、よく考えると大群衆の中だけでおこるものでない。「圧迫死」とはもう少し言葉を分解すると「体幹に対する強度な圧迫による内臓損傷(特に肺など)によって窒息、またはショックを起こし死に至らしめる」と読み解ける。だから圧迫死はなにも群衆のなかだけではない。例えば人を生きたまま竪穴に落し、上からドサッと土をかぶせ全身を埋めると、覆う土の圧力で当然「圧迫死」がおこる。この恐怖は群衆に押しつぶされる以上だろう。アウトローな社会の制裁、あるいは凄惨な犯罪として時々起こっているが、死体、証拠が土中に隠滅されるため発覚しない事件も相当あるだろうことを考えると怖い。

 私のような歳まで世界史が好きでいると、一般的な通史には飽きがきて、いろいろな変わった世界史のエピソードなんかをあさったりする。そのなかでも世界史の有名人たちの異常死の歴史という分野は結構面白い(刺殺、毒殺、面白いのでは腹上死など・・)。その異常死から「圧迫死」というのを探すと、残酷な殺し方を好まない日本史では聞いたことないが、外国では結構多い。有名なところでは中国・東晋時代(4世紀末)の孝武帝が布団蒸しにされ圧迫死させられている。他にも探せなかったが中国史上、皇帝や有名人で圧迫死させられたのが複数いる。ローマ皇帝も確認は出来ないが確かにいたと記憶している。

 中国ではたまさかの暗殺として用いられるどころではない。れっきとした刑罰として存在するのだ。高校の世界史では必ず習うキーワードに『焚書坑儒』というのがある。秦の始皇帝が多くの儒者を殺し、儒学の本を燃やしたことをさす。『焚書坑儒』を読み下し文にすると

 「書ヲ焚キ、儒ヲ坑ニス」(書をたき、儒(者)をあなにす)と読む

 すなわち儒者を竪穴に落とし、土をかぶせ生き埋めにしたのだ。偉そうに自分の治世を批判する儒者を皇帝の権力で圧死による死刑にしたのである。これを「坑にす」というのである。下は世界史のテキストにも載っている「焚書坑儒」の図、一説では数千人このようにしてブチ殺したと言われている。こわ~~~~ぃ世界史のエピソードだ。

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