2022年10月26日水曜日

水素バス

  昨日のこと、徳島駅に入るため、バスのターミナルと共用の歩道で待っていると終点のバスが止まって乗客を降ろしている。なにげに見ると、見かけがちょっと変わっている。最近増えた新型の「ノンステップバス」かとおもった(確かにノンステップだが)。


  しかしよく見ると横っ腹にこのように書いてある。


 これが水素を燃料に走る車・バスである。すでに市内を走っていたのだろうが、はっきり見たのはこれが初めてだった。

 前に友人の車で北島あたりを走った時、友人が変わったキャノピーのある広い駐車敷地を指して、「これが最新の水素ステーションじょ」といったのを聞いていた。もう2年以上になるかなぁ、コロナ前だ。サスティナブル(持続可能というらし)な社会を目指すためこのころからエコカーじゃの、再生可能エネルギーじゃの、電気自動車だの言われていた。要するに炭酸ガスをできるだけ排出しない(0に近ければ一番良い)社会を目指すのである。

 その一つとして水素エンジンの車が生まれ、いよいよ徳島でもこのように水素ステーションを作って実用が始まったのだ。水素を内燃機関で燃やしてできるのは水だから炭酸ガス排出は0である。電気自動車とならんで将来性が期待されている。私はもうずいぶん以前からマイカーを手放していたので、正直そんな将来の車のことまで関心はなかった。そう遠くない将来、炭酸ガス排出が0となる車にメーカーもユーザーもシフトし、それに適応できない車メーカーは淘汰されると聞けば、そうかと頷くばかりである。

 その炭酸ガス0の車の二大主流は電気自動車、水素自動車であるといわれている。古い人間としては、電気モーターの電気自動車よりレシプロやロータリーエンジンが使える水素自動車の方に愛着がある。レシプロやロータリーエンジンを全くなくしてしまうのは何とも惜しいような気がする。電気モーターでクルクルなんど、なんか味気ない、強力な爆圧でピストンやロータリーを動かすほうが私の好みに合っている。水素自動車はその爆圧、水素爆鳴気で強力な馬力を生み出し車を動かす。

 私は車も持っていないし、機械工学にも詳しくないが、先日、車も持っているし、メカにも強く、また若いので将来の車の乗り換えの考慮から、エコカーに関心がある男の人と話をしたことがあった。その人は、将来は電気自動車が優勢となり、またその生産は国を挙げてバックアップしている中国の自動車メーカーが日本や他の国のメーカーを圧倒するだろうと言っていた。私は自分の好みからレシプロやロータリーのエンジンが好きだから、水素燃料で巻き返しは出来ないものか聞いた。しかし彼は首を振った。電気自動車がやがて全世界を席巻し、エコカーの主流となって、中国の車メーカーが世界の電気自動車のシェアを大きく取るだろうと断言していた。

 (もう自分はそれまで生きてはいまいと思いつつ)ちょっとショックというか嫌な気分になった。百年以上かけて築き上げてきたドイツや日本の自動車は機械工学の華であると言って良い。細かな工作を必要とするピストン、シリンダ、など細かな機械部品が多く、燃費や馬力を上げるため、洗練に洗練を重ねてきた。世が電気自動車一色となれば、それらの技術はすべてガラクタとなる。そして更地になった自動車産業に新しく建てられるのは中国系の電気自動車産業となる、と聞けば残念を通り過ぎて悔しくなる。

 確かに冷静に考えれば電気自動車が未来の主流になることは理解できる。いま蓄電池の容量や充電時間の長さが問題となっているが、これは改善していくだろうし、なにか革命的な技術革新で桁違いの軽量小型大容量の蓄電池が発明されるかも知れない。そうなれば充電する時間を待つのでなく、あらかじめ充電してある小型軽量の蓄電池をカートリッジにすれば一瞬で交換できる。

 しかしなぁ~、機械工学の華のレシプロエンジン、かたや電気モーターくるくる、競争するとどうしても電気モーターが勝つんかなぁ、電気モーターは原理も作るのも簡単、現に私が中学の時、理科か技術家庭科か忘れたが、基本的な素材から電気モーターを作ったことがある。電池につなぐと手作りながらクルクルまわった。もちろん電気自動車の電気モーターは、私の手作りのモーターと比べ馬力が違うが、原理的には同じである。それに対し、レシプロエンジンなんかは、基本的素材から、中学生どころか機械工学を出た大学生でも作る事はできまい。それくらい内燃機関エンジンを一から作るのは難しい。

 中国が世界を席巻しているいわゆる白物家電(冷蔵庫、洗濯機、クーラーなど)は電気モーターが組み込まれている。中国メーカーの電気モーターは量ばかりか質でも改善している。なるほど、基礎から少しづつ積み上げ築いた複雑な機械の塊の内燃エンジンでは、中国は日本、ドイツに追いつけまいが、電気モーターならばと、特化して攻勢をかけてくるだろう。

 将来電気自動車のシェアが大きな部分を占めるのは仕方ないとしても、内燃機関のエンジンはなんとか将来も、発展的に残すべきであると考えている。そうすると炭酸ガスを出さない水素エンジンは、その希望の一つである。内燃機関エンジンの技術、ノウハウを全部破棄するには惜しい気がするがどうだろうか。

追記(訂正)

 ブログをアップした後で「水素自動車」について調べると、二種類の全く違う原理で動くタイプがあることが分かりました。

 一つは、内燃機関エンジンの「水素を直接燃焼させるタイプ」、これが私のブログのいう水素自動車であります。

 二つ目は「燃料電池を用いて発電するタイプ」でこれは水素と酸素から発電して、その電気で電気モーターを回す仕組みです。結局、電気自動車と変わりありません。

 そして徳島バスが走らせているバスは後者の、水素を消費する燃料電池を用いて発電し、電気モーターを回すしくみの車でした。

 私が見た徳島バスは確かにタンクから水素を補給して走りますが、これは水素バスというより「燃料電池自動車」です。上の二枚の写真をみると、「この車両は水素で走っています」と書いてありますが、「水素バス」とは書かれていません。私の早とちりでした。内燃機関で水素を燃やす「水素バス」は徳島ではまだ走ってはいませんでした。他府県ではバス以外にも乗用車、トラックなどが走っています。

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