午後4時前、時雨もよいの空の下、西の方に高越山を見る。あすから寒くなりそう。
毎年のように暖冬傾向が続いているが、それだけに寒波が来ると老いた身にはこたえる。日中から気温が下がり、冷たい風が強まり、雲の切れ間からたまに陽が射すが、いつのまにやら雲が空の大部分を覆ってしまい、時雨もパラパラ、寒波が来る前触れのような天気である。予報を聞くとやはり今冬初めての寒波がやってくるようだ。北陸以北は雪、ここ暖国阿波でも雪がちらつくかもしれないといっていた。
今日、14日は赤穂浪士討ち入りの日である(旧暦だが)、忠臣蔵の話は明治、大正、昭和、そして平成と時代が変わっても大衆に人気がある。ところが今年はその傾向も変わりつつあるのか、今日のTV番組表を見ても、地デジ・BSとも忠臣蔵番組はほとんどない、わずか一局で一時間の番組『吉良上野介の実像』があるのみ。
現代に敵討ちの話など流行らなくて当然といわれそうだが、忠臣蔵(仮名手本忠臣蔵)が江戸から現代まで根強く人気を保ってきたのは、敵討ちがメインだからではない、その中には、恋もあり、冒険譚もあり、また推理ドラマのような殺人事件もあり、多様なワクワクするような筋がたくさん詰まっているからである。その一部を取り出してドラマに仕立てて十分通用する面白さを持っている。逆にいえば舞台にする場合、最後の敵討ち成就の場面などほとんど取り上げない、つまり人気がないのである。それより仮名手本忠臣蔵の中の恋や、道行、廓の話、故殺事件の話の舞台のほうがだんぜん人気があって面白い。
意外と知らない人がいるようだが、幽霊話の最も面白い(というか最も可怖い)のは「東海道四谷怪談」だが、これ実は忠臣蔵の外伝(つまり関係者が引き起こす話)である。そう考えると忠臣蔵の話は単なる敵討ちの話だけではなく、大きなエンタメとしての『世界』を持っていてその中で展開するエピソードはすべて忠臣蔵の話となるのである。何やら忠臣蔵の本質を換骨奪胎して別物にしたような気がするが、それでいいのである、江戸時代から現代まで、忠臣蔵モノ、義経モノ、曽我兄弟モノは一応それを標榜(つまりちょっとでも関係)していれば、内容は本筋からずれて面白いものにしていいのであり、そうやって忠臣蔵、義経、曽我兄弟の話はいろいろと発展し生き残ってきたのである。
いま世は鬼滅の刃が大人気である。これなどは伝統を重んじる立場からいえば、各地にある「鬼退治伝説」の一つに見える。そこでどうだろう、忠臣蔵外伝として、なにか鬼退治の話を作って忠臣蔵の世界に加えてはどうだろうか。TV番組で『忠臣蔵外伝・鬼切丸』などとタイトルを打ってそれらしくドラマをつくれば(少しでも忠臣蔵つながりを入れること)、鬼滅に浮かれる今の世、視聴率を稼げる気がするが。
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