2022年9月11日日曜日

君主の名称は

  エリザベス女王の崩御に伴い、息子のチャールズ皇太子がイギリス国王チャールズ3世なることを宣言した(即位式はのちに行う)。日本の御代替わりは新元号で象徴された。しかしイギリスは元号はないから、新しくできる公式文書に令和と書き加えなくてもいい。従って政府の事務手続きは日本より簡略なのだろうと思っていたが、日本以上に大変な作業が待っているようだ。あちらは紙幣やコインに統治する王や女王の肖像を用いているため、それを新国王の肖像に切り替えるのに手間暇金もかかるようだ。

 今、君主国がうんと少なくなっている。世界で200ほどの国があるが君主制をとっている国は1割強(26ヶ国)、西洋も極東も20世紀が始まるときその大部分は君主国だった。21世紀を迎えた今、西洋にはまだ多く残っているが極東では中国、朝鮮の王朝が倒れた今、残るは日本のみとなってしまった。極東の君主国は治世をあらわすのに元号を用いていたが、それも今は日本のみになってしまった。

 ところで西洋では国民が歴代の君主を呼ぶのにその名前(ファーストネーム)で呼ぶ(直接君主に対面した場合はもちろん名前で呼ぶのは失礼なので三人称の尊称をつかう)。西洋の王室では王族の名前は庶民と同じで、キリスト教の守護聖人や伝統的な名前から選ぶことが多い。だからエリザベス、チャールズは庶民階級でもありふれた名前となる。また親や祖父、先祖に同じ名前があっても重なるからと忌避することはない。だからヘンリーなどという名が先祖に何人もいたりする。庶民はそれでもいいだろうが、王様となると同じ名前であると先祖の王との区別がつきにくいから、番号をふって1世、2世・・となる。

 しかし極東の君主国(清朝や大韓帝国、日本も)では、歴代君主を本名で直接呼ぶことは不敬に当たるということで、当代は、陛下、お上、など尊称称号で呼ばれ、歴代の君主は追号(おくり名・死後つけられる)で呼ばれる。近世になると(日本も明治以降)一世一元となるので元号の君主名で呼ばれる。

 さて今回王位に就いたチャールズ3世陛下である。その名は世界史にちょっと詳しい人は聞き覚えがあるだろう。チャールズ3世とあるから当然1、2世も過去にいらっしゃったが、歴史上有名なのはチャールズ1世である。彼は17世紀に清教徒革命を引き起こし断頭台で処刑されているのである。イギリス人は不吉に感じないのか日本人ほどは気にはならないようだ。名前が悪いのではなく、人格が問題だ、とごく当たり前の理屈が西洋では通っていたのであろう。今は王室はないがフランスなどではルイという名はよっぽど好まれたのか18世まである。16世がこれまた革命で断頭台で処刑されるがやはり気にせず、その後も18世までルイと名付けている。

 ちなみにチャールズ3世の息子のウイリアム王子(皇太子)が国王になればウイリアム5世となり、その子の(孫)のジョージが王位を継げばジョージ7世となる。チャールズ、ウイリアム、ジョージももちろん庶民にも好まれて名付ける人は多い、王室の子供にも好んで用いられているようだ。庶民に人気がある名で、王様に複数回使われなかった国王の名前に「ジョン」がある。中世、ジョン王がいたが(1215年に世界史ではジョン王マグナカルタ承認、で覚えている人が多い、いい国つくろう鎌倉幕府1192年、のように、ヒトニ言われてイゴ気をつけよう1215年、の年号記憶フレーズが有名)、2世は以後今に至るまで現れていない。イギリス人やアメリカ人のもっとも多い名がジョン・スミスと聞いたことがあるがジョンの命名はイギリス王室では不人気なのだろうか、歴史上ジョン王は失策が多かったが、革命を起こされ首を切られたチャールズがなんども使われているところを見ると、忌避したわけでなくたまたま使われなかっただけなのかな。

2 件のコメント:

Teruyuki Arashi さんのコメント...

ダイアナ妃が不審死したので、イギリス王室は好きになれません。皇室も好きではないですが

yamasan さんのコメント...

>>テルさんへ

 ダイアナさんねぇ、もう何年になりますかね、四半世紀(25年)立つんじゃありませんかね。

 立憲王政は昔と違って民主主義とは相性がいいようで世界で最も民主・自由度が高く福祉の優れた国は北欧のいくつもある君主国ですね。
 それと逆に、国名で民主主義人民共和国なんぞと歌っている共和国は果たして民主・自由があるんですかね。独裁じゃないですか。国民は共和国より君主国のほうが不幸だとは絶対言えませんね。