昨日のスポツ紙に面白い事件が載っていた。この事件の犯人は逮捕され下に挙げるように全国紙スポツ紙の紙面を大きく飾っている。まぁスポツ紙に大きく取り上げる市井の事件はよほどの重罪、または破廉恥罪、有名人の犯罪(軽いのも含め)だがどれも違う。
さて事件であるが、最終目的は「ある人を殺すこと」である。そうだとするとこれは凶悪重大事件かというとそうは言い切れない。「殺人罪」、「殺人未遂罪」、あるいは殺人準備罪でもいいが、まず構成要件の第一は犯人の「殺意」である。はたして犯人に明確に殺意はあったのかというと疑問符をつけざるを得ない。しかしまぁここでは殺意もあったとしよう、そしてその目的を遂げるために「ある実行行為」もしている。しかしけっして「殺人未遂罪」にも「殺人準備罪」にもならない。なぜか?それは呪い殺そうとしたからである。
現在刑法では相手を呪い殺す目的で呪術行為を行ってもそれだけでは何の罪にもならない、「きゃつを呪い殺す」なんどと公言していれば何らかの刑法上の罪に問えるかもしれないが秘密裏に(例えば自宅で護摩壇などで呪法を行う)行う分には(わかったとしても)何のおとがめもない。しかし日本史を勉強している人はよく知っていると思うが奈良朝から平安朝にかけては呪い殺す「呪法」は大罪であった。呪い殺す、ということが実際にあると信じられていた時代であるから、これは殺人未遂罪と同じに見られた。奈良朝では何人もの皇族、高位の貴族が館から政敵を呪い殺すための呪術道具(人形などが多い)が発見され、冤罪、でっち上げにもかかわらず罪に問われ失脚させられたり、殺されたりしたのである。
古代中世では呪法によって命が縮められるということが信じられていたが、江戸時代になるとさすがそのような行為は「殺人実行行為」とは見なされなくなる、忌まれ厭われる闇の祈祷行為ではあるが犯罪には当たらなくなる。それでもその闇の祈祷(西洋では黒魔術というのだが)は江戸時代結構流行する。よく知られているのは呪い殺したい人のわら人形を作って真夜中、神社に参詣し境内の神木などに釘で打ち付ける呪法である。「丑の刻参り」と一般的には言われている。これは結構人気があって昭和時代にも引き継がれていた。私の子供の時、近所の神社の境内でその丑の刻参りのわら人形が発見されたと話題になっていた。
私のイメージは、神社の丑の刻参りの藁人形は、不実で憎い男を呪い殺す女性が行うのが普通だと思っていた。白い着物をきて髪はざんばらにし、鼎を逆さまに立てて頭に被り、丑三つ時、鼎の足にろうそく三本立て、藁人形を五寸釘で神社の神木に打ち付ける、スリラー小説の挿絵そのままである。やる方は覚悟があるから肝も据わっているが、たまたま深夜にそれを見た人、ましてややられる相手が知ればかなりビビるだろう。それでも現代においてその行為が犯罪となることはないと私は思っていた。
ところがその同じ行為で72歳のおじいさんの逮捕である。左が昨日の事件の記事である。一体何の罪で、記事を読むと藁人形を釘で打ち付けて神社の建物・器物を損壊した「器物破損」、それと「不法侵入」であるとのことである。不法侵入ってそもそも神社は祈願するところ、よき祈願は不法侵入ではないが悪い祈願は不法侵入になるんかぇ?器物破損罪はまぁわからないではないが、神社がたとえ悪い祈願だろうが祈願人に「不法侵入罪」はそりゃないと思うが。その呪い殺す相手が「プーチン大統領」という。犯人の呪い殺す相手が知人や利害関係人なら藁人形の呪法がしれたらずいぶん気分悪く、罪の一つでも負わせたくなるが、プーチンじゃぁ、だれも感情を害することもあるまい。まぁこの爺さん(わいとほぼ同い年やないか)、御念の行ったことにアッチャコッチャの神社で、効果が増すと思われたのか10件も同じことをやっていたようだから、やり過ぎ(まぁ一つでも器物破損罪ではあるが)感はあるが、そんな新聞に大きく載るような重罪ではないのにちょっとかわいそうな気がする、器物破損は弁償するとして起訴なんかせんと説諭くらいでこらえてやったらいいと思うがどうだろう。
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