2013年1月17日木曜日
ノラな生き方
『ノラな生き方』というとほとんどの人は野良(のら)、つまり、野良猫や野良犬のような生き方を思いますよね。よい生き方としてはあまり使いませんよね。
そんな生き方を、ふと思ったのは、夕べ久しぶりに訪れた阿波川島駅でした。
暗くなった駅舎のベンチの下にささやかな寝床と飯椀を設えてもらったあの駅長猫(私が勝手にそう名づけた)がいたのです。
以前、ブログで初めて紹介してからすでに2年がたちますが、このように丸々と太って元気なのです。
その日暮らしどころか、前後の記憶能力のきわめて低い猫などは、その時(瞬間のみを生きる)暮らし、本能の赴くまま生き、食べ物などもくれる人があればもらい、なければ猫盗人となる『あなた任せ、風任せのおいらの世界』
発情すれば、オス猫と遠慮会釈なく、まさにサカリのついた猫で、やり狂い。勝手に子猫を腹からひり出す。子猫のうちは本能で舐めもするし、乳もやるが、少し大きくなれば、わしゃしら~~ん。
まことにノラな猫人生
以前いくつも紹介したのですが過去のそのブログの一部をご覧ください。
ここクリック
ここくりっく
これでは長生きなど出来はすまいと思い、写真を撮りながら哀さを催していた。
ところがもう一年以上にもなる昨夜の川島駅でのノラとの再会・・・
「なんとしたたかに生きているものか!」
ノラな生き方、のノラは野良、ととればこのような野良犬野良猫のような飼う人もいないし保護する人もいない、しかしそれだけに頸木や絆もない自由奔放な野生に近い放浪する動物あるいはそれに例えた人のような生き方になりますね。
もう一つの『ノラな生き方』というのもあります。現代の人はノラの生き方といえば野良をイメージするでしょうが、大正から昭和の初めの頃の人が、ノラな生き方、と聞いた場合はある女性の生き方を頭にすぐ思い浮かべたはずです。
それはイプセン作・戯曲『人形の家』の女主人公ノラです。テレビもないし、映画もそれほど普及していなかったこの時代、人々は舞台によってこのノラの生き方を知ったのでした。
なぜ北欧の戯曲が日本で人気を博したのかというと、それは日本で初めて女優ともいえる松井須磨子の人気によってでした。
彼女の演じるノラ(妻)は人々、特に女性にセンセーショナルな衝撃をもたらします。
この時代、日本の女性は結婚すれば夫に従うものと思われていました。貞淑で従順な妻が美徳とされたのでした。民法上でも男性のような地位はなく、法律行為を行う場合でも妻は夫の後見が必要でした。
極端な言い方をすれば女性は自立した人格を有する人とは認められなかったのです。それじゃあ、あたい結婚なんかいやだわ、と言って結婚もせず仕事を持ち自立して生きることはほとんど不可能なものでした。
こんな時代、舞台で演じられたノラは、人格を認めてくれない夫に対し、自ら家を出る決意をするのです。
これはこの時代の日本の女性から見れば革命的な出来事でした。女性の自立、ということが劇中とはいえ社会的な問題として提起された最初といっていいでしょう。
(下は松井須磨子の演じるノラ・人形の家)
今、こんなノラの話をしても皆さん全然実感がありませんね。今、女性は法的にも平等、別に夫に縛り付けられる存在でもない。自由に離婚して家を出ることもできますからね。
『昔は一緒に歩いていても妻は夫に従うものとされ、三歩下がって夫の後をしずしずと・・・・・それが今や、気に入らねば、三歩下がって夫にとび蹴り・・・いや、言いすぎました。男女平等のイイ世の中です。』
自由な生き方をするという意味では猫の野良も女主人公のノラも同じですね。
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4 件のコメント:
私の場合「ノラ」といえば、ノラ・ジョーンズですね。
曲はほとんど聞いてないしよく知らないのですが、確かグラミー賞でかなりの数を受賞していたように思います。父親があのラヴィ・シャンカールと聞いてぶったまげた記憶があります。
「ノラ」のイメージは「のらりくらり」というのもありますが、そうだと「あいまい、つかみどころのない、はぐらかす」なんて感じになって日本人の特技のような気もします。(^-^)
ノラという名は北欧系に多いようですよ。
わたしもノラという日本語としてのイメージはしんさまのいうのに似たものと肯定的に受け取っています。
しかし、どうしようもない、という否定的な意味で用いられるのがはじまりのようですね。
江戸時代の文楽に『女殺し油の地獄』というのがあるんですけど、その犯人の放蕩息子のことを彼の母親が「あのノラめが!」とののしるのがあります。
食事直前、野良猫にビフテキをかっさらわれたら
「あの、ノラめが!」
というでしょうね。
今の時代 川島駅のノラ猫のようにしぶとく生きられる人間が求められているのではないでしょうか。
猫は記憶もないし考えないからあまりストレスがないんじゃないかな。
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