2012年8月12日日曜日

禅問答


 未熟な学徒に真理を教えるのに問答法は有意義である。しかし、これは時間と教師の気長な善導、そして工夫が必要である。そのような回りくどい方法を排して、これが真理だと、一方的に押し付けることは教師としてはたやすいが、それでは本当に学徒が真理に達したとは言えない。

 古代ギリシャにおいても我が東洋の禅においても問答法真理・悟りに達するため教師が用いた方法である。
 古代ギリシャの哲学者、たぶんソクラテスだったと思うが、無知と思われていた奴隷相手に問答法を用いで正方形のきっちり2倍の面積を持つ同じ正方形を作図させた。教師自ら真理を教えることなく、奴隷から問答法によって真理(答え)を引き出したのである。真理を生み出す元は奴隷の中にあるのであり、教師はそれを生み出す手助けをするのみである。真理を赤ちゃんに例えるなら、産むのは母親(この場合奴隷)であり、教師はいわば産婆の役である。ソクラテスはこれを産婆術と名づけた。

 仏教、特に禅宗においても問答法は真理・悟りに導く方法であった。しかしギリシアのそれとはずいぶん違っている。
 ギリシャの問答法は、公理・定理を立て、また概念、定義をはっきりさせ、その上で論理に従って緻密に言葉を積み重ね真理に近づいていくものであった。

 これに対し禅の問答は???、意味不明の飛躍、なんでそうなるのとしか言いようのない問答がつづく。そして真理。悟りに到達する時はわずか一語の問答であってもパッとワープするように終着点に着く。

 わたしらの凡人にはちょっと理解しがたい問答となる。これを
 『禅問答』
 という。
 しかし凡人には理解できぬ高邁な問答は、おバカな問答と紙一重である。これをおちょくった有名な落語がある。
 引用しておくから是非読んでみてください。
 ここクリック

 さて、この禅問答を踏まえたうえでこれをご覧ください。先日(8月10日)の我が郷土の新聞に載った記事です。

 よくわからない木造ですが、膝の下に猫を抑え、短刀を振り上げ猫の首に振り下ろそうとしているところです。この人は禅宗のお師匠さんです。

 禅宗には公案と呼ばれる問答の研究課題のテーマが昔から多くあります。その一つ『南泉斬猫』(なんぜんざんみょう)です。私は禅宗には詳しくはありませんが、三島由紀夫の小説「金閣寺」にこの『南泉斬猫』が出てくるので有名になり、それで知った人が多いのです。私もその一人でした。

 かなり難解なテーマらしく私などは全くわかりません。

 上の記事ではネコに仏性があるかどうか言い争っていた弟子に対し無益な論争はすべきでないと戒めた、とありますが、その戒めのため、なんとこの写真の像のように

 『スッパリと猫の首を落としてしまったのです』

 老師がそれをやったのですから、かなり深いさとしの意味があるはずですが、あなたわかります?私などはこの老師に対し、慈悲の実践仏教者として

 「なんちゅうことをさらすねん!」

 と思いますが、いまだにあ~だのこ~だの後の宗教家、哲学者がのたまってますから、なにか深遠なわけがありそうです。

 そしてこの論争の時、居なかった老師の第一の弟子が帰ってきて、老師がその第一の弟子に向かってお前ならどうした?と聞いたそうです。
 そうするとその弟子は、自分のはいていた履(はきもの)を頭にのせてすたすたと山門を出て行きました。
 それを見ていた老師は

 「ああ、あの時、お前がいてくれたら、猫の命は助かっただろうに。」

 と慨嘆したそうです。

 私にとっては老師が老師なら弟子も弟子、まったくわけのわからぬ行動です。

 小説に取り上げた三島由紀夫によればこの猫はこの上なく美しくかわいい子猫あった。それは美のエロスの象徴であり、それをめぐって禅寺の僧侶たちの争いになった末、老師が迷妄をたつため子猫の首をスッパリ斬ったのである。

 そうならばわかりやすい。でもそうとすると次の疑問は、第一の弟子の履を頭にのせる行動はなに?
 う~ん、履は足に履くもの、頭に載せるのは、『倒錯』している。つまり

 「子猫をエロスの対象とするような倒錯した性欲の寺にはいられぬとすたすた履を頭に出ってたわけか。」

 昔から寺、修道院などに飼われていた豚、羊などは僧たちの性欲のはけ口として使われたとはよく聞くが・・・・
 猫では穴がちっさかろうに・・・・・

 ととと、おっと、これも禅問答!わけのわからぬ自己問答でした。お忘れあれ。

3 件のコメント:

Unknown さんのコメント...

かなり難解ですね。一晩考えいろんな説が浮かびましたが、どれもいまいちでした。やまさん説が一番斬新で面白いとおもいます。(~o~)

てるゆき さんのコメント...

難しいですね。僕の思考能力ではわかりません。

yamasan さんのコメント...

しんさま、てるさん

わからないのは私もまったく同じです。
皆さん、ところでお盆は充分休めてますか。英気を養って残りの残暑を乗り切りましょう。