2022年3月31日木曜日

蔵本 泪桜(なみだサクラ)

  蔵本駅プラットホームの端、跨線橋の下に泪桜(くらもと桜とも表示してある)がある。今を盛りと花開いている。みたところ「しだれ桜」と変わりがない。とくに「なみだ桜」と名付ける理由があるのだろうか。

 まえに一度、古くからのことを知る地元の人に聞いてみた。古くからといってもまだ80歳にはならぬ感じだから戦後生まれかもしれない。その人がいうには昔(戦前)今の徳島大学医学部~県立中央病院の広大な敷地に「歩兵連隊」の兵舎があった。その入営の新兵を見送る家族や恋人が、涙ながらにこのこの木の下で見送ったので、それにちなみ「なみだ桜」と名付けたらしい。

 このとき桜の花の時期ならなるほど、と納得するが、新兵の招集日は公には一月中旬ころで、桜の季節ではない。それに昔(大日本帝国の時代)徴兵は20歳以上の男子は原則全員徴兵された。徴兵の入営日にそんなにみんな涙を見せるだろうか。

 むしろ太平洋戦争が激化し、体が弱くて徴兵検査で乙や丙種合格した人にも赤紙(召集令状)がくる、そして若い人に代わって中年も徴兵され、また少年兵も募集されるようになった。戦死の予感を抱き、二度と帰らぬ別れとなるかもしれない出発である、駅のホームで家族や恋人が見送った時、それぞれが見せた涙とそのときホームに咲いている満開の桜のほうが、情緒的にはずっと納得できる話である。

 木のそばには「なみだ桜」との立て看板があるのだからいわれをちょこっとでも書いていてくれればいいのだが、いまのところ想像するしかない。

 ♪~腰の軍刀にしがみつき、ヨヨと泣いた妻よりも、ホームの陰で泣いていたかわいいあの女(こ)がわすられぬ。(ズンドコ節より)このぉぉ~浮気者め!)



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