2021年11月19日金曜日

徳島公園の晩秋

  徳島公園の下にみえる芝生広場、様々な種類の木が植わっているが、真ん中に銀杏の木が一本ある、上部はかなり葉を落としているがそれでも真っ黄色に色づいている。この場所、春はこの銀杏の老木の横にある豪奢な枝垂れ桜の満開が目を楽しませてくれる。


 この反対側の藩祖の銅像のある周りにも銀杏の木が数本ある。こちらはまだ落葉も本格的ではない。晩秋の黄色味を帯びた陽光をうけて、見事な黄金色に輝いている。


 少し近寄ると、プゥ~~ンと強烈な匂いが鼻をつく、畑にまく肥しと同じ匂いだ。知る人ぞ知る、これは銀杏の味が熟して落ちて、それから香ってくるものである。近寄ると下一面隙間もないびっしりとその実が落ちている。踏みつぶしながら近寄るのをためらう。

 しかし、銀杏の実ってにおいの元である果肉を洗い落とし、硬い外殻を割ると翡翠色の柔らかい実が得られる。これ、すごくおいしく、貴重な食材となる。ごくたまに茶碗蒸しなどの底でお目にかかり一粒たべるが、殻付きの実を炒って供せば、ピィスタチョやアモンド、クルミなど以上に素晴らしい酒のあてのナッツになるのだが、ここではそんな銀杏の落下した熟実をとって食材にしようという人はいないのか、落下した実が絨毯のように広がっている。やはり実の匂いに辟易するのだろうか、そういえばほかにも素手でこの熟実をつかむと手が荒れると聞いたが、ともかく食材にするには厄介なのだろう、採取する人は今のところいない。銀杏は雌雄異株であるため、最近は街路樹には雄の木を植えているそうだから、実をつける銀杏も減っているようである。

 そうそう、永井荷風さんの小説を読んでいて知ったのだが、この銀杏の葉っぱ、本に挟んでおけば紙魚(紙を喰う害虫)の予防になるということだ。予防効果はともかく銀杏の落ち葉は柔らかく、あまりない扇形をしているので、葉として栞に用いるのはなかなかいいと思う。

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