午後二時前、薬・雑貨を買い、徳島駅前をウロチョロしていると、目も彩な振り袖をきた若い多くの娘たちがゾベラゾベラと歩いている。一瞬、なに?と思ったがすぐ気がついた。成人の日前倒しの、おそらく市主催の、各小学校校区単位の「成人式」に出席した乙女たちだろう。
振り袖の美しさは格別なものがある。その上振り袖は年々、華美、派手さが増している気がする。この歳まで生きて、それこそワイが成人式の頃から、成人式だけでなく、卒業式や結婚式などの祝い事なんぞで多くの娘たちの振り袖を見てきたが、今日の徳島駅前の乙女たちの振り袖は、大げさに言うと「この世のものとは思われぬ美しさ」であった。どの娘もすこぶるの美女にみえた。みんなウサちゃんの白い毛で作ったようなショールを肩に軽くかけているのでまるで「天女」の羽衣のような気がする。
今、鑑賞している「百人一首」から、強いてこの情景を同調させるとすると、次のような句になるだろうか。(僧正 遍照作)
天つ風 雲の通ひ路 吹き閉ぢよ をとめの姿 しばしとどめむ
アミコビルの方に歩きながら、首は後方にずっと向いて、天女にもまがう振り袖の乙女たちを見続けていた。
それにしてもそこにも(駅前)成人式帰りの男の子もいたはずだ。あとで思い浮かべるとまっさらピンピンのスーツ姿の若い男が「そ~いや、いたなぁ」っつ~くらいの認識のうすさである。沖縄あたりの成人式にはキンキラキンの羽織袴の男もいるようだが、ここ徳島の駅前では、普通の羽織袴の男もいなかった。成人式の華はやっぱり女性の振り袖姿やなぁ。
百人一首の絵札遊びに、「坊主めくり、姫めくり」がある。華やかさのない男の絵札にめくりの点はつかない。坊主の札なんぞめくったら、全部の点を取られてしまう。だが、華やかな十二単の女性札は高得点がつく。みんな姫の着物姿は評価しているのである。成人式の振り袖の女性は、彩りの美しい刺身の盛り合わせだとすると、男なんざぁそれの横にちょこっとおいてあるツマみたいなもんだろうか。
振り返り振り返りアミコの二階広場に上るエスカレータに向かうと、そのエスカレーターの横で、ワイの歳くらいの羽織袴のジイさんが右手で皿回しをし、左手で団扇をあおりながら踊っていた。(横に置いたカセットからは、♪~年の初めのためしとて~♪、が流れていたが全然踊りに合っていなかった)
「こりゃ、なんぞ?」
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