2021年9月18日土曜日

シングルレコード

 数日前、フォークシンガーの訃報を聞いた。フォークグループ「猫」のメンバーの大久保一久さんが亡くなったと。

 このグループ「猫」については忘れられない曲がある。『雪』である。なぜ忘れられないかというと、このフォーク曲『雪』は私が初めて買ったシングルレコードだったからである。それまでウチにレコードなどはただの一枚もなかった。というより、このはじめてのシングルレコードを買ったのはポータブル電気蓄音機を買ったのと時が同じであった。それまでは蓄音機がないのに当然レコードもないのは当たり前、大学生になって自分の小遣いから安物の小型の電気蓄音機を買ってから、徐々に購入したレコードの枚数が増えていったのである。

 それまでは音楽はラヂヲを聴いていた。深夜放送などでは当時全盛だったフォークの曲がよく流れていた。私もみんなと同じようにフォーク好きの青年になっていたが、それはラヂヲから流れる曲に影響を受けたからである。しかし私の友人なんかは高校生の時にはすでに家に電気蓄音機、あるいはもっと豪華なステレオ蓄音機などを所有していて、あれこれのレコードを買っていた。友人の家に遊びに行ったときお気に入りのシングルレコードや、LPレコードを聴かせてもらって、うらやましく思ったものである。

 ようやくなけなしの小遣いをはたいて買えたのはもう大学生になっていた。しかし電気蓄音機はそれだけ持っていても仕方がない、レコードがあって初めて価値があるものとなる。今でいう「ハード」と「ソフト」であろうか。「ソフト」であるレコードを買い揃えるにもかなりの金がかかる。LPレコードなどは2~3枚買うと、私の買ったおもちゃみたいな安物の小型電気蓄音機と同じくらいの金額となる。

 さて電気蓄音機を買って、最初に買うレコードは何にしようか、お気に入りのフォークにしようと思ったのは当然だが、お気に入りも十数曲あったはずである、その中で(もう半世紀も前なので詳細はよく覚えていないが)選んだ第一号レコードはシングルレコードの「雪」(フォークグループ「猫」)だった。LPレコードほどではないがシングル盤も価格は390円だった。日々の小遣いで買えるものではない、なにせ当時の大学の学食の昼飯でさえ70~90円でセット定食が食べれたのであるから、そうそう手ンごろ易く買えるものではなかった。その後ちょっとづつシングル盤も増えていった。ちなみに初めて買ったLPレコードはイムジティ楽団のビバルディ「四季」であった。

 左が初めて買ったシングルレコードジャケット、猫の『雪』である。今から思うと一般的にはそう流行した曲ではなかったが、当時の私は気に入っていた。擦り切れるほど度々聴いていたが、時がたち、聴く回数も減り、そのうち押し入れにしまい込み、やがてCD時代となり、引っ越しなんどもあった失せてしまった。



 下がその当時の曲「雪」である

 

 電気蓄音機とシングルレコードが自分のものになったのは大学生の時であったが、中学時代にほぼ定期購読していた雑誌がある、雑誌名は忘れたが「少年の科学」雑誌関連の本である、その綴じ込み付録にシングルレコードではないがペラッペラのセルロイド様の「ソノシート」と称するレコード盤によく似た円盤が入っていた。蓄音機にかければ曲が聴こえるのだが蓄音機を持っていなくても聴けるようになっていた。同じ付録に切り抜き厚紙とアルミホイル、針、手回し取っ手、などが入っていて組み立てるとだいたい下のような即席の蓄音機が出来上がるのである。


 ソノシート(レコード)の中心に近い部分に中心穴とは別に穴が開いており、そこに釘のような取っ手を突っ込み手でソノシートを回転させるのである。すると溝を針が擦るように動き、その振動が針を通じて張られたアルミホイルシートに伝わりそこから音が発せられるのである。しかし手で回すため速度はムラがあり、へんな抑揚の曲となるのである。また音量もかすかであり、耳を澄ませば聞こえる程度のものである。

 しかし少年科学雑誌の付録らしくなぜ音がレコード盤に録音されまた再生されるのか、その付録を組み立て、そしてそれを手で動かすことによって、その原理がよくわかる仕組みになっている。いまやCDがどんな原理で音が録音され再生されるか、ほとんど知ることのない時代となっているが、昔は発明王エディソンの蓄音機の実験の雰囲気をこのようにちょっぴり味わえ、その原理もなるほど!と納得できるように体験できたのである。

4 件のコメント:

carlos さんのコメント...

ソノシートが鳴る付録があった児童向けの雑誌を持っていた記憶がある。
たぶん学研の『科学』だと思う。
学校で申し込んで買っていたような気がする。
虫の飼育セットやゲルマニウムラジオ、顕微鏡、試験管、石の標本などが付録にあった。
ちゃちなものだったけど、当時の少年にとっては宝物だった。

『子供の科学』というのもあった。これは今も出ている。

勝ぼうず さんのコメント...

なつかしなつかし^^勝ぼうず

yamasan さんのコメント...

>>carlosさんへ
 コメントありがとうございます。
 コメントの中になつかしい言葉が並んでますね、ゲルマニュームラジオ!昔の科学少年の作ったものの中では一番に取り上げられなけばならないのですが、実は作るには作ったのですがラヂヲの音声は受信できませんでした。失敗作でした。今から思うと電波塔の元にある徳島市のような強力な電波地帯でなければならなかったのでしょう。何せ西部の田舎でしたから微弱な電波の力だけでレシーバーを振動させるのは無理だったのでしょう。
 ちなみにこの鉱石ラヂヲはセットでなく、模型飛行機などを扱っている近所のおもちゃ屋で、エナメル線、可変コンデンサ(バリコン)、円筒コイル、レシーバなどを個々に買って組み立てたのですが残念でした。
 今でも本屋に「大人のおもちゃ」として、エジソン式ロウ管蓄音機、鉱石ラヂヲ、和時計の組み立てセットが並んでますね。この歳になってもちょっとそそられます(買いはしませんが)、たぶん私のような年配向けでしょうね。

yamasan さんのコメント...

>>かつぼうずさんへ
 毎回の動画見てますよ、自演の音楽の選曲も私が好きなものが多いです。ただ祖父母の元で育ったせいか、昭和初期の古い歌も好きです。私も自分の伴奏で、赤い花なら曼殊沙華~♪、とうたいヨウツべにアップしたいのですが、いくら何でもそれはアナクロすぎてその勇気がありません。かつ坊主さんがいつか歌ってくれるのを期待しております。