藤や桐の花はすでに終わってはいるが色とりどりの鮮やかなツツジ、白い卯の花、青い紫陽花などが目を楽しませてくれる。ヘアピンカーブを二回ほどまわると、前方に100mはあろうかという山の断崖絶壁が見えてきた。なかなか勇壮な眺めである。断崖の上方に目を凝らすと一筋の白い糸のようなものが見える。これが灌頂瀧だった。灌頂瀧はもっと山道を登った先と思っていたが意外と登山口から近い位置にあった。
紫陽花を通してみる灌頂瀧、一見したときはすごい断崖絶壁という印象で瀧があるとは思わなかった、よく見ないと頂部の一条の水流は見えない。
瀧の石段の手前に灌頂瀧の説明板がある。
石段を登りつつ見ると、だんだん見上げる角度が大きくなり、しまいには真上を見上げる形となり、いかに瀧の落差が大きいものであるか実感できる。
瀧の落ちるあたりはほとんど霧状のしぶきとなっている。そのまま下まで太い水流だったら100m近い落差でものすごい水圧になるから、このようにシャワー状態になったほうが修行者の水行(灌頂)をするにはちょうど良いであろう。
私が瀧を見た時刻は午前10時過ぎであった。説明板によれば午前8~10時頃までは朝日に照らされて瀧のしぶきが七色に輝くという。それでこの瀧を「旭の瀧」とかその現象を「不動の来迎」とかいうそうである。しかし写真を見るとわかるが、飛沫は陽光を反射しているが七色にはなっていない。不動の来迎を見るには少し時間が遅かったのかもしれない。
石段は瀧の落ち場(水行場)の横をさらに上方に続き、瀧を真横に見る岩の龕のような場所で行き止まりとなっており、そこには不動尊(不動三尊像)が祀られている。岩の龕はわずかな平地があり、護摩行が行われるのであろう、焦げた地面、木材などが見える。
この場所から見るとちょうど瀧の流れが真横に見える。
不動を中心に向かって右が観音像、左が大師像である。
左上方にも不動堂があり不動尊が祀られている。
左上方のお堂にある不動明王尊
暗くて見えにくいが上の不動明王は「覚鑁上人」作と伝えられている。石段入り口付近にある看板はこの不動尊製作者の説明である。名前の「覚」は読めても次の「鑁」の字を読める人は少ない。
覚鑁は「かくばん」と読む。弘法大師ほどは知られていないがこの方は新義真言宗を立てた人といわれ、宗教史では有名な人である。「鑁」の字の本来の意味は馬の頭の飾りだが、読み方を「バン」というところからその発音の類似で「鑁」を梵字のवं(vaṃ)にあてている。これは金剛界大日如来の種子になるから宗教で使う「鑁」はそちらの方に意味付けされている。覚鑁という名を分解すれば、「鑁」である金剛界大日如来を「覚」る、という意味深い名前になる。
瀧の動画
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