2020年6月28日日曜日

鴨島を流れる地表水

 梅雨の期間中であるが今のところ(6月27日現在)例年に比べると少雨であるようだが、梅雨の後半期は集中豪雨のようにドサッと大雨が降るので今後はわからない。中国では反対に多雨傾向なのか、重慶の洪水の動画がアップされていたり、三峡ダムの保水ができず放流のため洪水が発生しているとのうわさがネットで駆け巡っているが、情報の統制が厳しい国だから真偽のほどはわからない。

 日本にいては水の有難さを実感することはほとんどないが中国を含め大陸諸国では水は生命のもととして非常に重要視される。それは量、質ともに必要な水を確保することが難しいからである。作物の水どころか飲み水さえ不足すればたちまち命にかかわってくる。またたとえ量が確保できても水質が悪ければ疫病などの健康被害も出る。

 日本人は良質で豊富な水を当然視しているところがあり、そのせいか、日本では○○の日というのを作ってその○○の価値を知り、それに感謝する啓蒙活動をしているが、「水の日」というのはほとんど知られていないし一般化していない。もちろん「水の日」も設けられている。実は私も知らなかった。ただ漠然とあるとしたら、あっちこっちに水たまりができ、雨の多い6月のいつかだろうと思っていた。ところが案に相違して「水の日」は8月1日である。炎暑の時期で、年によるが貯水池の水が干上がるというニュースが聞こえてくるころである。しかしこの8月1日の設定も考えると納得できる。6月の豊富な水が供給できるときでなく、需要がひっ迫する時もある炎熱期の8月1日のほうが水のありがたみがわかろうというものである。

 いい気候風土に生まれたためほぼ70年間生きてきて日照り水不足にあったことはない。むしろ豊富すぎて水害に会ったことがあるくらいである。といってもこの歳まで床上も下も浸水被害にあったことはなくせいぜい家の前の道が冠水したくらいである。しかし、二年ほど前、ウチの前を流れる「江川」の流路やその変遷を調べていてドキリとする事実を知った。それはこの江川は、大昔たびたび流路を変えて暴れていた吉野川(四国三郎の異名を持つ)の本流であったこともあるということである。ということはノアの洪水が起こるような世紀(百年に一度あるかないか)の大雨が降りつづいたら、あふれた吉野川の洪水が昔の本流(江川)にドッと流れ込み、ウチの家なんかは流れる川の底になるかもしれない。

 大昔、人為的な堤も堤防もない自然状態のわが故郷の河川の流路を見てみると下のようになる。

 なるほど、水不足はまず起こりそうにないが、水害の心配がある、というよりむしろこんな迷路のような河川が縦横無尽に走っている平野部にはそのままで住めるはずがない。たびたび流路が変わり、陸地部分も平地はおそらく湿地であろうから、住居には向いていない。だから縄文の頃は南の四国山地の裾野の微高地に住居を構えていたのである。ところが稲作が始まると、この低地平野部はよい水田地帯になる。ただしそのためには流路をを堤や堰堤などで安定させ、中小河川は田の用水に利用するため土木工事で統合、整理する必要があった。本流を安定させるため長大な堤防が作られ、中小河川は数本にまとめられ、また流路の後の低地には用水を引いた。

 その千数百年にわたる人為の結果、下が令和の御代の河川、水路の地図である。

 鴨島の地表水は二つの中河川、そして麻名用水にまとめられていることがわかる。中河川の二つのうちの一つはこの地図では見えていないが北方の江川(これについては以前ブログにアップしてある、ここクリック)、そして今一つは飯尾川である。北方の江川は昔は吉野川の本流ないし支流だったことを考えると鴨島の地(じ)の中河川というと現在は飯尾川一つになっている。もっとも四国山地の谷筋から流れ下る小河川がいくつかあるがいずれも飯尾川に流れ込み、飯尾川と一体化している。

 最初に見た太古の川の流路図と比べると二番目の現在の地図の流路はずいぶんまとめられて単純になっている。麻名用水と飯尾川である。飯尾川はいくつかの小河川をまとめ単純化、そしてコンクリで護岸をしたため、ある部分では自然河川とは思えないようになっているが、おおむね古くからの自然河川の形をとどめている。現在、大雨でも降らぬ限りは、実のところ流れる水の量を言うと飯尾川より麻名用水の方がずっと多い。また安定して流れている。飯尾川より麻名用水の方が水質がよく水量もだんぜん多いのである。

 それでは具体的にその鴨島の地表水の二つ、麻名用水と飯尾川とを見て行こうと思う。まず人工的な地表水である麻名用水であるが、これは吉野川本流の水を高低差を利用して川島の出水口から取り入れて用水路を流している。その取り入れ口は川島岩の鼻にある。下の航空写真で見ると赤の矢印部分が取り入れ口でその水はすぐにトンネルを通って城山の下を抜け黄色の矢印の部分で地表に出て平野部を流れる。

 その用水は西麻植を流れ2Kmばかり進むと堰堤によって北と南の二本の用水路に分けられる。北の用水路は牛島の北方を通って石井町の高原の方まで流れ、南の用水路は飯尾川と複雑に絡みながら山路、上浦から石井の浦庄まで流れている。

 航空写真を見てみよう。地図の右端近くに赤の矢印で示してあり少し見にくいがこの部分でY字を横にしたように分岐しているのがわかる。

 さらに分岐した東流を見るため地図を見てみると、別れた二つの用水は大きく隔たって北は石井町高原方面、南の用水は浦庄方面に流れていくのがわかる。

 上記分岐部分の写真を見てみよう。

 流れてくる水圧を受け止めるため煉瓦で頑丈に組んだ三つの三角形の形をした堰堤があり、水流を南と北の水路に分けている。赤い矢印が北流用水、黄色の矢印が南流する用水である。

 これがもう一つの自然河川である飯尾川の流れとなると用水のように単純には行かない。源流は四国山地のいくつかの谷筋から流れる小河川であるが、これにも当然のことながらその固有の河川名がある。そのいくつかが集まり飯尾川をなしているのだが、ハテそうなるとどちらの小河川の方が飯尾川の名を冠する本流としてよいか極めてあいまいになってくる。おまけに麻名用水と並行したり複雑に絡んだりして流れている。むしろこれは意図的に用水の流路をそのように作ったのである。それは麻名用水の水を飯尾川に流したりして麻名用水の水量調節をするためである。

 飯尾川を実際に遡って自分の目で確かめてみると、用水と並行して走っている川のあたり、あるいは絡み付いたりして流れているあたりでは、どちらが果たして飯尾川か用水か曖昧なところがあった。その飯尾川の名前も上流では谷川の名前をとった小河川になるので公式の地図においてもどこまでが飯尾川なのかはっきりしないようで、飯尾川と谷川の小河川の両方の名前の混乱が見られる。

 地図を見ながら説明しよう、
説明を追加

 地図の左端から流れる用水は先ほど見たようにAの部分で南北の麻名用水に分かれる。では飯尾川の源流の川はどうなっているかというと地図で見ると①が四国山地の谷筋から流れた小河川である。
 ところがBの部分、これは流路の矢印を見てもらうとわかるが並行して流れる用水に入っていくように見えるが、並行して走る二本の用水の真ん中部分は葦や水草があり、南の用水の水と交わりながら、用水の水を真ん中部分に落とし、それが並行して走る小川となっている。写真を見ると下のようになっていてわかりにくい。左から①の小川が流れて右の用水と交わる。


  用水側から撮った流れ込む①の流れ、橋の下から流れ込んでいる。

 この①の流れが飯尾川の源流の小河川である(飯尾の字名の地を流れているため)。

 上記の地図のBとCの間の部分、はたして①の流れがずっと下流の飯尾川につながっているのか、地図を見ると断線しているようにも見えるが、このBとCの間の部分は葦や丈の高い水草で覆われ、かつ①の流れはいったんは用水路に入るため(一部河川に流れる)普段は流れていないような状態である。しかし雨が続き山から水が小河川を流れ下ってくると、本来の飯尾川の流れをとりもどし、BとCの間の部分は水量が増え本来の流れる川状態になる。

 そしてCの部分の写真である。丈の高い雑草が河川床に生い茂っているのでわかりにくいが上方右から流れこむ流れと下方右から流れこむ水が合流して一つになり左に流れて行っているのを確認してください。下方右の流れがBから来る飯尾川で上方右からの流れは地図で言うと②の川で(地図では道路に隠れて消えたようになっているが北流してCで飯尾川に合流する)、藤井寺のある谷から流れている川なので藤井寺川と呼んだりしている。

 この藤井寺川をCの位置から南へ向けて撮った写真が下図、護岸されているが用水でなく藤井寺川である。ここでも用水と立体交差している。手前、横切るのは麻名用水である。藤井寺川と比べると用水の水面が高いので立体交差できるのだ。

 間隔の狭い南北二つの用水、その間に挟まれる飯尾川、お互いの水の交換もある、極めてこの三者はわかりにくいが、もう少し下流の③地点になると南北の用水の幅が広がり、三者は全く分離しているのでわかりやすい。真ん中の③の流れが飯尾川である。鳥観図で見てみると下のようになる。

 この③の飯尾川の流れはD位置まで流れてくるが、この部分、よく見る何本もの水路が確認できる、ちょっと拡大してどのような水路か確認してみよう。

 地図の種類によってはこの三谷川を飯尾川としているのもあるが、先にも言ったように上流に遡ればどれが本流かについては迷いがある。しかし飯尾の地名をとってそこに源流を発するほうの川を飯尾川とした。

 このD部分は用水と三谷川が立体交差している場所ですでに前のブログで紹介した。動画を見てもらうとわかるが上が用水、下を三谷川が直角に流れている。そして用水から三谷川に水が流れ込み河川の水を増やしている。

 この辺りの写真を矢印の方向から撮ったのでご覧ください

 ㋐の写真

 ㋑の写真

 ㋒の写真

 ㋓の写真 

 ㋔の写真

 ここより下流では飯尾川は用水との相互干渉は無くなり屈曲して流れるが普通の平野部の中河川の形態をとり鮎喰川の河口付近で吉野川と合流する。

 立体交差部Cの動画

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