2020年5月29日金曜日

暑さとマスク、そしてなぜか中世絵巻物

 昨今、コロナの影響でマスク装着率が汽車や密室などではほぼ100パーセントになった。しかし、これから夏に向かう。極寒期などはマスク装着で暖かくもあろうが蒸し暑い時のマスクは余計に暑苦しさを増す。また肺の力の弱い人は息苦しさを感じる人もいる。蒸し暑さと息苦しさで「布団蒸」状態の苦痛を忍ばなければならない。

 できれば十分暑くなったこの頃、マスクなんどはつけたくないが、人のいるところはどこへ行ってもマスク必須みたいな雰囲気で自分一人外しているのははばかられる。こんなのを無言の同調圧力というのだろうか。これから益々暑くなるのに何とかならないものだろうか。

 そう考える人は多いみたいで、それならと、アイデアマスクを考えた人がいる。名付けて「冷やしマスク」。なんか冷やし中華みたいなネーミングだが、要はマスク内部を二重ポッケにして保冷剤を入れて使用するらしい。ヒンヤリと気持ちいいそうであるから、これから夏に向けて流行って売れるかもしれない。保冷剤はあらかじめ冷凍庫で凍らせておくようだ。いいかもしれないが私は使わない。価格が数千円もする上、いちいち使用の度に冷凍庫から保冷剤を入れ替えねばならない。そこまでしてマスクをしたいとは思わない。

 日本の夏はタダものではない。マスクで顔の半分も覆っていれば、冷房のない所では多くに人に熱中症が発生するかもしれない。マスク装着の無言の同調圧力のある中、いったいどうすんだ?と思っていたら、当局さすがに熱中症でバタバタ倒れるのはまずいと思ったのか。「熱中症の心配があるので無理にマスクをしなくていいですよ、ただし三密を避け、ソシアルデスタンスは取ってくださいよ」と言い出した。当たり前である。しかし当局が言わなければマスク同調圧力を崩すのは難しい。

 もう一つ、当局はいいことを言いだした。これなど私はちょっと感心させられた。それは、「外を歩く時はソシアルデスタンスをとるため傘をさして歩きましょう。」という呼びかけだ。これなど少なくとも傘の半径以上は距離をとる上に、直射日光を防いで熱中症を防ぐ一石二鳥のいい方法である。ここ数年、熱射病を避けるため男でも夏の日中、日傘をさす人が増えたが、コロナを防ぐためのソシアルデスタンスにもなるので、これからは男でも大っぴらに日傘をさして歩いたらよいと思う。

 西暦1270年代の中世日本の風俗を見る上での格好の資料がある。「一遍上人絵伝」である。これに日傘が出てくる。鎌倉時代に早くも畳める傘があったことも驚きだが、日傘をさしているのはほぼすべて男である。



 そうそう、この「一遍上人絵伝」を見ていてソシアルデスタンスをとるのにいいグッズが中世の風俗にあるのを発見した。女性は日傘を差さない代わりに「市女笠」というかなり大きな直径を持つ深笠を被る。下がそうであるが、これには周囲に薄物の長い絹のカーテンがついている。これを「虫垂れの絹」という。これなどは軒のような大きな傘で相手との距離が取れるし、虫垂れの絹は、今、コンビニのレジにあるようなビニルシートの役割を果たし、飛沫感染を防ぐことができるのである。誰ぞ、若い子ぉでもこれを被って流行らしてくれんかな。ええと思うがなぁ。


 もう一つ、飛沫感染を防ぐグッズが中世にある。下の絵巻に見える「扇」(おうぎ)である。扇子ではない。今の扇子と違って丈夫でかなり大きなものである。中世の貴人や女性は大口を開けてしゃべって唾を飛ばしたり、ゲタゲタ笑ったりしなかった。しゃべるとき、笑う時は、このように扇で口元を隠したのである。これなども飛沫感染を防ぐいいグッズになる。ものに触れる時なども閉じた扇で触れたり、また直接手渡ししないで扇を広げてその面に乗せてもらったりした。皮膚接触がないため衛生的である。

 最後にこの絵巻を見ていると集団でマスクをしている人々があちらこちらの寺社の境内にたむろしている。中世にマスク?まさか、でも、白の布で目から下を広く覆っている。この人々はいったい誰?



 この人々、寺社の一応、下級労働者(特殊な技能をもつ非農の集団)で「犬神人」と言います。(後世の非人や穢多に比べられるが、差別される人々であったかは不明)

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