70数年生きてきてボニの推移をみていると、昔とはずいぶん変わったものだとおもう。第一、ボニという言葉なんぞこの阿波国の人でさえほとんど使わなくなった。ボニとは「お盆」のことであるが、私の子どもの時はみんなお盆のことを「ボニ」と呼んでいた。
またボニは家にとっても重要な行事であった。おじゅっさん(御住持・檀那寺の僧侶)を呼んでお経を上げてもらい供養をしてもらうので仏教行事でもあったが、また家の先祖祭りの意味もあった。子供の頃は仏壇や、あるいは時によったら、特別の棚や檀をつくってハスの葉、ダンゴの棒(オガラか)、キュウリや茄子の作り物、ダンゴや地のブドウや梨、のお供え物、を仏画の掛け軸(お不動さんかお大師さん)、そして位牌の前にならべ、またボニ特有の料理も作ったりと、かなり賑やか(?)なおまつりであった。
しかしそれも時とともに簡略化していった。今は墓に香華を手向け自ら供養するのと、仏壇にスーパーで買ってきたお供え物をちょろっと置いて祈るだけである。また亡父がキリスト教による葬儀を望んだため、親父の死後は檀那寺の僧侶を呼んでの読経もやっていない。私は別にキリスト教に帰依したわけでもないので寺との関係を引き継いでもよかったのだが、私には子もなく他に男子もいないこの家は私一代で断絶するので寺との関係を再びは求めていない。永代供養という手もあるが永代供養料の莫大な費用を考えたらそれもしていない。
この阿波ではボニ踊りとして「阿波踊り」が藩政時代から有名であるが、これも時代と共大きく変わってきた。男女の浴衣はワイの子ども時代とあまり変わっていないが、大きく変わったのは女性の編み笠である。昔は頭頂部は水平に被っていたが今はほとんど垂直に立てるように被るようになっている。このため頭の格好がずいぶん尖って見える。そのほうがカッコよく見えるというのもあるのだろう。
踊り方も特に若い人の踊り方では「これは別物ではないのか」と思うほど変化してきた。まぁ歌や踊りは一般的に言って、時とともに変化するものである、これも仕方ないのかなぁと思うが、藩政時代からの伝統のボニ踊りというなら、基本の(どれが基本であるかは議論の余地はあるが)型は守って欲しい、そうしないとまさに別物となるであろう。またお囃子も打楽器が主流になり、おかげで笛や三味線の音が消されてしまっている。だから最近の阿波踊りの音を擬音的に表現すると私には「♪~ドンガラガチャ、ドンガ、ドンガ~」のようにな聞こえる。はっきり言ってうるさい。
踊りの形態で一番寂しいのは、昔は、小さな町、村単位で、衣装になどはあまりこだわらず、普通の浴衣、また簡単服などで気軽に、手作りのボニ踊りに参加できていたが、今は、徳島市、鳴門市、その他の市町村合併によって出来た大きな市以外ではボニ踊りとして開催できなくなっている。そのため市井の人々(特に田舎の町や村)の参加は殆どなくなり、手作りの、あるいはおらが町のボニ踊り、という意味は無くなってきている。その分、観光化は進み、見た目は派手になり見る人を多く集めるようになったが、昔を知るものとしては寂しい。
そうそう、前のブログで、「ワイのような偏屈ジジイには静謐なボニがええから、雨でも降ってくれんか」などと不埒なことをかいたが、今日になって台風7号の進路予想図を見ていると、なんと次第に西寄りに進んでいるではないか。あくまでも予想進路でまだ確定ではないが、徐々に西に進路を取るというのは各種の違う予想でも一致しているから、当初よりはこの徳島に影響があるかも知れない。
三つの違う当局が出している予報を見てみると、日本の気象庁予想進路は潮岬から京都を結ぶ線の北上、アメリカ軍の気象予報もだいたい日本の気象庁と同じ、ところが欧州の長期予報システム「ウィンディ」をみるとなんと、紀伊水道を北上しほとんど徳島市の上空を通過する予報となっている。これだと徳島市は中心が通ることになる。14日~15日にかけてのようだ。風だけだとかなり強く吹こうが若い踊り子連なんぞは、涼しくてちょうどええわ、ちゅうて踊るだろうが、さて問題は雨である。なんぼうなんでも雨の中では踊れまい、台風独特の間欠的な雨だと合間を縫って踊るということもあり得るだろうが持続的な大雨となれば致し方ないだろう。さてどうなるか、関係者はやきもきするだろうなぁ。
2 件のコメント:
盆の墓参りについて、行かないと言ったら母が泣いて頼むのでしょうがなく、行きましたが、墓参りも、盆も人間がつくったものですよね。人間は死んだら無になるので
台風が来たおかげで、踊りが中止になってよかったです。
>>テルさんへ
そりゃぁそうですよ、お墓参りも含めお母さん孝行とおもい彼岸、盆暮れは連れて行ってあげてください。お節介なことですがお母さんを泣かせてはいけません。
私も自分一代で墓は無縁になりますが、生きて足腰の立つうちは香華を手向けお参りしようと思っています。
子があっても、後々子孫に負担をかけたくないため永代供養する家も増えています。時代とともに墓の維持の有無も変わるかも知れませんが、今生きている、お母さんの意思を大切にしてください。
エラそうなことをいってすみません。
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